唐変木が浮気してたのでモブ人生を謳歌することにした【文スト】

悲しみ ページ5

「帰りました」


「ただいまです!!」


東のヘタレ、谷崎はこのものすごく重い空気で縮こまった



僕、何かしたっけ？

賢治くんと一緒に依頼をしに行っただけだよね？

え、もしかして本当はすごいお偉いさんで僕達の対応が悪くて苦情が来たとか？



どれだけ谷崎が考えても正解にたどり着くことは出来ない

これは太宰とその彼女の問題なのだ

わかるわけが無い



それに谷崎は実際に本村を見たことは無い

太宰からの惚れ話でしか聞いたことがない

惚れ話は始まれば2時間は軽く超えるから1回聞いた時にもう絶対に聞かないようにした


「おかえり。上手くいったかい？」


「まぁ、はい。それでこれは？」


与謝野女医が気を利かせたのか、はたまた怪我をしてないか確認するために声をかけてきた

多分後者が理由だろうなと谷崎は思う

そして治療を思い出し身震いする

一連の流れになってきた





これ、とはこの空気の事だろうねェ

ちぇ、怪我してないのか

せっかく新しいメスを買ったから試そうと思ってたのに



与謝野女医は少し肩を落としながら谷崎の質問に答えた


「本村って聞いたことあるだろ？その本村が探偵社をやめるらしくてねェ」


「帰ってくるのは今日では？」


「何故だか知らんが俺が社に着いた時にはもう置いてあった」


「本村さんって太宰さんの彼女さんですよね。急にどうしたんでしょうか」


Oh、賢治

そんな大声で太宰の傷口に塩を塗るようなこと言わないであげて

まぁ、素直に思ったことを言っただけだろうけど


「何があったか知らんがもう仕事を始めなければ。おい、谷崎。報告書早くしろよ」


「え、あっはい!!」


すごい切り替えの速さ

机に座ったと思えば早速仕事を始めた国木田さん

彼が動くと社員みんな仕事を始めた





太宰さんは項垂れてるというか、落ち込んでるというかよくわかんないオーラが出ていて近付きにくい

……声をかけた方がいいのか否か

声をかけたら刺されそうだ

それに太宰さんが動かないのはいつもの事で仕事に差し支えない

いずれなにかするだろう

そう考えて谷崎は太宰を放っておくことにした





1度連絡をしてみるか、と思い太宰は携帯電話をもう一度見た

アドレス帳の中にある『本村A』をタップして電話をかける



繋がらない

おかけになった電話番号は……という無機質な機械音声が耳に伝わるだけ



その声を聞き、無意識に写真を撫でていたことには気付かなかった

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