lua e sol (崖っぷちホテル！) (ページ42)

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「せっかく準備期間があるんだったら、私、それ作ってみたいんです！！」

宇海と名前が事務室に戻ると、奥の総支配人室からハルの声が響いてきた。それにまた、宇海は嬉しそうに笑う。

「今は幻になっちゃったそのケーキ！！！」

少し困っているのか、勢いに圧倒されているらしい佐那がハルを宥める声も聞こえてきて、宇海と名前は顔を見合わせてから総支配人室を覗いた。

「今、私が読んでたのにも確かに書いてあった。昔お父さんが誕生日に持って帰って来てくれてたりしたケーキだと思うんだけど……。でもそんな急には……。」
「それ、いいアイデアですね！」
「え？！」

ノックもなしに支配人室に入ってきた宇海は何事もなかったように会話に混ざっていく。驚く佐那は宇海について入ってきた名前と目が合うと、今度は名前がそれに同調した。

「あのケーキ、すごく美味しかったよね。」
「名前、」
「私も、もう一回食べられるなら、食べたい。」

その言葉を聞いてさっき佐那にOFFにされたばかりのスイッチをONにしたのはもちろん名前センパイが大好きなハルで、「絶対にそのケーキをセンパイに食べさせてみせます！！」と気合は十分だ。

「そのケーキを復活させて、プレオープンのイベントをやるんです！ケーキフェアを！」

支配人室の外に居た丹沢を巻き込んで、イベントの告知を頼む宇海。
ちょっとしたアイデアが、宇海の手によってどんどんと具体化していく。
勢いに圧倒されながらも、彼の行動力を名前は密かに尊敬するのだった。

「名前さんは丹沢さんと告知の方をお願いします。でもケーキの味を知っているのは支配人と名前さんだけなので、名前さんは状況を見てハルさんと支配人とケーキの復活の方も、お願いします！」
「あ、……はい。」

会って3日目にして既に慣れてしまった彼との距離に名前は一歩後退ってから了解の返事をする。躊躇う佐那をハルが押し切り、プレオープンのイベントが正式に決定した。

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