絶賛、アプローチされ中。3【千切豹馬】

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『2ゴール目です千切選手！いやぁ絶好調ですね！』


｢＿＿だ｣


『千切選手と言えば、同じくプレミアの凪選手やブンデスの潔選手と同じ"青い監獄"出身ですよね』


｢＿なだ｣


『そうなんです！青い監獄出身の多くの選手は海外で活躍しています』


｢さなだサーン？｣


『千切選手は前シーズン、7ゴール6アシストと好成績を残してますね』


｢真田！｣


｢びゃっ！｣


イヤホンをぶんどられた衝撃で耳がちぎれるかと思った。


スマホの画面から驚いたまま視線を移すと、先輩社員の宮さんがいた。


｢な、なんですかいきなり｣


｢ずっと呼んでたよ。また彼氏の試合見てんの？｣


宮さんは私のスマホを覗き込んでため息をつく。


｢違います。アナリストとして対戦相手を分析するのは当然ですから｣


｢全体ミーティングも個人ミーティングもしたじゃん｣


本当にこの人はああ言えばこう言うな。


｢心の中で悪口言ったろ｣


｢いえ、別に？｣


彼はうちのチームに所属する日本人選手の専属トレーナー。


日本での活躍が買われ、5年前に海を亘ってイングランドへ。


そしてその3年後に私が。


｢帰ったらヒョーマチギリがいるんだろ？どんな人生だよ｣


｢またその話ですか｣


｢高2で付き合って……お前今27だっけ？｣


｢まだ26です｣


変わんねぇだろ、と宮さんは言うが女心の分からない人だな。


女は少しでも若くありたいんだよ。


｢10年も付き合ってんのか。結婚願望あんの？｣


｢それじゃ、ヘッドコーチとミーティングしてきまーす｣


26歳と訂正したのに27歳として計算されたのがむかついたので席を立った。

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