絶賛、アプローチされ中。3【千切豹馬】

101 ページ21

.

センターマークに伸びた手と、無慈悲に鳴り響くホイッスル。


｢マンシャイン・シティが勝利しました＿＿!!｣


心がはち切れそうだ。


どう形容すべきか分からない悔しさとやるせなさが全身を襲って。


だが、それらとは正反対の達成感のようなものもある。


ここまで来た者にしか与えられない特権なような気がした。


崩れ落ち項垂れるうちの選手達から視線を外し、今日この瞬間から頂点に立つ彼らを見る。


彼らは……豹馬は、夢を掴んだ。


同じスポーツを愛して夢を追いかける者として、誰よりも豹馬の努力を見てきた恋人として、心から敬意と祝福を。


｢やっと、叶えられたんだね……おめでとう｣


豹馬の夢が叶ったということは同時に、私の夢が敗れたことを意味する。


それがどうした。


たった1回、負けただけだろう。


そんなことは夢を諦める理由にはならない。


無限に湧いてくる悔しさは、夢を叶えて消し去るしかない。


＿＿次こそ、絶対に叶えてやる。


清々しい笑顔で喜びを分かち合う豹馬の横顔に、そう強く誓った。


"豹馬が世界一のストライカーになる瞬間を見たい"


あの頃の何もなかった私に、豹馬は色んなものを与えてくれた。


"おう、絶対連れてってやる"


寄り道もしたけど、そのおかげで色んな景色が見えたよ。


約束、守ってくれてありがとう。


＿＿本当に、本当に、おめでとう。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

←100

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す