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「こうやって私服で出かけんのって2回目?」
「そだね。去年の打ち上げぶり」
あの後、場所を移動して近くのカフェに入った。
「言いそびれたけどさっきはごめんね」
「なにが?」
「アイツらしつこかったからさ」
察せと言いたげに視線を送ってくるA。
……あぁ。
追い払うために彼氏待ちの設定にしたことだろう。
しかも、その後すぐ俺が現れるもんだからタイミングが良いのか悪いのか。
「もう早く来すぎるなよ。俺とのデート、そんなに楽しみだった?」
「それはそっちもじゃん」
デートという言葉で照れると思ったが、Aは案外けろりとしてる。
なんなら打ち返された。
彼女はカフェオレを一口飲んで置き、俺を見て言う。
「豹馬、昨日はお疲れ様」
「…ありがと。最後まで出れなかったけどな」
大口叩いといてあのザマかと、自嘲気味に笑うことしかできなかった。
「私もホテルで試合振り返ってさ、本音を言えばゴールを決める豹馬が見たかったよ?」
ごめんと謝りかけて、それを遮るように続けるA。
「座り込んだ時は超心配したし、怖かった。結局あれは何だったの?」
「あぁ、情けないことに足つっちまって」
「だよね。スタミナ切れとかその辺かな。次は最後まで全力で走れる体でピッチに立つんだよ」
「トレーナーみたいなこと言うんだな」
するとAは不思議そうに首を傾げた。
「それができなくて一番悔しかったのは豹馬でしょ?」
そこにはひとつの他意もなくて、彼女の底なしの優しさが痛いほど刺さった。
「試合に誘ってくれてありがとう。超楽しかった」
目を閉じてしまいたくなる眩しい笑顔。
チームのため、ましてやプレーを見る誰かのためなんて、今までの俺では考えられない気持ちが湧いた。
俺のサッカーで、俺以上に楽しんで喜んでくれる人。
世界一のストライカーという俺の夢を、自分の夢だと言ってくれる人。
この人はずっと俺の一歩先にいて、ずっと俺を待っててくれたんだ。
「頑張ったんだね、かっこよかったよ」
好きなサッカーをすることが、好きな人の力になる。
「諦めなくてよかったでしょ?」
「ははっ、そうだな……なあA」
「ん?」
これだけは伝えなくちゃいけない。
「ずっと信じてくれて、ありがとう」
「…これからも楽しみにしてるよ、ストライカー」
「おう、任せとけ!」
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にいな(プロフ) - はなさん» めちゃくちゃ嬉しいお言葉ありがとうございます…😭😭更新頻度にムラはありますがちゃんと完結させるつもりなのでもうしばしお付き合い願います🤝🏻🫶🏻🧑🏻🦲💫 (4月21日 3時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
はな - やばいこの作品好きすぎます!明日も予定があるのに一気読みして泣いたり笑ったり感情の変化で大変でした笑続きかでるのいつまでも待ってます!これからも頑張ってください、こんなにも素晴らしい作品に出会えて幸せです! (4月9日 0時) (レス) @page20 id: 673a51e041 (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - ゆいさん» 返信大変遅くなりました🙇🏻私も書きながら改めて千切豹馬っていい男だなと再確認しております😌もうしばらくお付き合い頂けると嬉しいです〜❕ (3月8日 1時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - 花怜?ゃ?さん» 返信大変遅くなりました🙇🏻もうしばらく続く予定ですので最後までお付き合い頂けると嬉しいです🥰🙌🏻 (3月8日 1時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - コメント失礼します。超、キュンキュンしました❣️❣️続きメチャクチャ楽しみにしてます!!!!! (1月1日 0時) (レス) id: 0c58a6db25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にいな | 作成日時:2023年6月13日 1時