絶賛、アプローチされ中。3【千切豹馬】

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勝率が一体なんのことかは教えてくれないまま豹馬はラバトリーへ。


モヤモヤした気持ちを抱えながら朝食の最終準備をする。


昨日から秘密ばっかり、いつから秘密主義になったんだよ。


｢今日も作ってくれてありがとな｣


おかしいな、豹馬の長所は高校の頃から"素直"と"優しい"のはずなのに。


｢…優しいだけの男か｣


｢何の話？｣


｢"秘密"、教えない｣


｢なんだよそれ｣


やり返しただけだもん、私は悪くない。


喧嘩はこれくらいにして、対面に座って朝食を食べ始めた。


豹馬のご飯は私の3倍近くあるので見てるだけでお腹がいっぱいになりそう。


｢あ、言うの忘れてたけどセレモニー一緒に回ってくれよ｣


｢え、やだ｣


｢俺も周りが家族と回る中1人で回るの嫌だよ｣


そんな大事なことを今伝えられる方が嫌だから。


｢凪君達と回ればいいじゃん｣


｢アレは2人で1セットだから｣


否めないのが今は悔しい。


高校から同じチームで世界一を目指す2人が、もし今日それを叶えられるとしたらとても素晴らしい日になる。


それをうちの豹馬が邪魔するわけにはいかないか。


｢一応確認だけど、複雑な気持ちにならない？｣


｢なんで？｣


｢俺達のどっちかが勝ったら、どっちかの夢が遠のくわけだし｣


｢死ぬ気でここまで来たんだもん。どんな結果でも、後悔しないくらいの努力はしてきた｣


バスケを失った私も、豹馬との差で焦ってた私も、今の私が全部拾ってここまで連れてきてくれた。


夢を目前にして強くそれを実感した。


勝てば嬉しい、負ければ悔しい。


そんなシンプルな感情にはなれないだろうけど。


豹馬の夢が叶って喜ばない私はいないし、夢をもう一度叶えるための私も消えない。


｢ま、どっちが勝ったとしてもお祝いしなきゃね｣


今送れる最大のエールを豹馬にあげる。


｢だな。一緒にセレモニー出れるのも楽しみにしてる｣


｢またその話…敵チームのセレモニーなんか出たらブーイングされるよ、うちが勝つんだし｣


｢付き合ってんの世界中知ってんだぞ。うちが勝つから安心して出てくれ｣


確かに、皆が恋人や家族といる中豹馬を1人にするの忍びない。


｢…MOM(マン･オブ･ザ･マッチ)になれたらね｣


｢よし来た、任せろ｣

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