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「来ちゃった」


走ってきたのだろう、膝に手をついて息を整えるAが額に汗を滲ませて笑う。


理解が追いつかないまま反射的に駆け寄った。


聞きたいことは山程あるけど、それよりも、


「お前って奴は…」


「んぐっ」


俺の体にすっぽり埋まるAの小さな体。


周りの目なんて気にせず、Aを強く抱き締めた。


「お、折れる…折れるから…!」


「あ、わりぃ」


強く抱き締めすぎたらしい。


体を離して顔を合わせる。


「学校は?」


「早退してきた。出発時間は伊藤君に教えてもらった」


ドヤ顔でピースをするA。


「ほんっと、どこまで可愛いんだよ…」


「よくわかんないけどありがと」


Aはそう言って、カバンからかりんとう饅頭を取り出した。


「餞別、くれてやる」


「くれてやるって…まあ、ありがと」


受け取って自分のカバンに潰れないように大事にしまった。


「もう満足したから、早く東京行きなよ」


「Aが勝手に来たんだろ、別れを惜しめよ」


「後悔しないために会いに来たの」


だからもう早く行け、とAは手を振る。


「え、なに?」


その手をぎゅっと握ると、僅かに震えてるのがわかった。


「向こう着いたら連絡する」


「うん、わかった」


「毎日メッセージ送るから返信しろよ」


「…うん」


「時間あったら電話もかけるから出ろよ」


「…ん」


徐々に震えが大きくなっていく。


泣いている姿を見せずに別れたかったのだろう。


だけど生憎、強がるAは見飽きている。


「今泣き尽くしといて。俺のいないとこで泣くなよ」


「…がんばる」


「あと目移りすんなよ」


「…こっちのセリフ。浮気相手はサッカーだけにしといてね」


「ははっ、なんだそれ」


俺の笑いにつられてAも笑顔になる。


湿っぽいのはもういいんだもんな。


それに、これは悲しい別れではない。


前を向くために必要な別れだ。


次会う時、Aに相応しいと思える自分を取り戻すために。


「それじゃあ、行ってきます」


「うん、行ってらっしゃい」


もう一度、本気でサッカーをやってみるから。


少しだけ待ってて。

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にいな(プロフ) - さくらさん» ありがとうございます!!何卒最後までお付き合い下さい〜!!♡♡ (4月12日 2時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - すごく面白かったです!頑張ってください!サイコー! (4月8日 20時) (レス) @page1 id: 2b4aba0b1a (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - 由衣さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます🥰これからも頑張れます👊🏻 (2023年4月11日 20時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
由衣 - この作品大好きであります…‼︎尊い…これからも更新楽しみにしています! (2023年4月10日 16時) (レス) id: ddafeb5c63 (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - うなぎポテトさん» お気遣いありがとうございます🙌🏻これからも頑張ります‼️ (2023年3月30日 20時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にいな | 作成日時:2023年2月2日 18時

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