その天才、恋愛初心者につき。【凪誠士郎】

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｢体調はどう？｣


｢だるい…風邪って自覚しちゃうとしんどくなるよね…｣


いつも私が眠っているベッドに横たわる誠士郎君。


彼の白いおでこに熱さまシートを貼る私。


床に落ちたいくつかの水滴。


どうしてこんなことになったかは、時を遡り約15分前。


｢…雨｣


｢わ、本当だ。雨宿りしよっか｣


そうだね、と近くにあったバスの停留所に駆け込む。


｢びしょびしょだあ｣


誠士郎は濡れたシャツをぎゅっと絞る。


綺麗な白髪から滴る水滴。


こういうのを大人の色気っていうのかな。


私の目に映る誠士郎君は、美術館に飾られている彫刻や絵画なんかより、とても美しかった。


｢そんなに見られたら恥ずかしいんだけど｣


｢あ、ごめん…｣


誠士郎君は真っ白な肌を赤くして、顔を逸らした。


………赤い？


そういえばさっきから少し息が上がってるような…


｢ちょっとごめん｣


湿った前髪をかきあげて右手を彼の額に置く。


｢…多分熱あるよ。かなり高いかも｣


｢あちゃ、朝から少し体がだるい気はしてたんだよね｣


｢さすがに鈍いよ…｣


｢だるいのはいつもだから｣


そんな呑気なことを言っている場合ではない。


ここからだと私の家まであと少し。


さすがに1人暮らしの病人をこのまま帰すほど薄情な人間ではない。


それに玲王の宝物だし、サッカーに支障が出たら私が怒られちゃう。


タイミングよく来たタクシーを拾い、だるそうな誠士郎君を支えて乗り込む。


目的地は、私の家。

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