その天才、恋愛初心者につき。【凪誠士郎】

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｢凪君ってさ、好きな食べ物とかある？｣


一緒に帰り初めて10分。


話題提供は全部私からで、そろそろネタも尽きてきた。


玲王、やっぱり凪君と友達になるのは難しそうだよ。


私の家まであと20分、これといって盛り上がる話題もなかった。


正直このままだとちょっとしんどい。


1人でネガティブ全開の思考を巡らせていると、凪君が急に思いついたように言う。


｢呼び捨てでいいよ、名前｣


｢えっ｣


｢え？｣


えっと、それは凪の方？誠士郎の方？


いや、さすがに凪だよね。


玲王もそう呼んでるし。


｢えっと、凪…｣


｢誠士郎｣


｢え、そっち？｣


｢そっち以外なくない？｣


｢……じゃあ、誠士郎君｣


言い聞かせるように名前を呼ぶと、凪君改め誠士郎君は、うん、と満足気に少し口角をあげた。


｢好きな食べ物かあ。レモンティーは好きだな｣


｢あ、そうなんだ｣


呼び捨てでいいよ、から最初の質問の返答という変化球に大して面白くもない返事になった。


会話をする度に、もっと面白い返しが出来たらな、と少し思う。


玲王みたいに会話だけで人の心を掴むことはできっこないんだけど、少し憧れてたりする。


｢Aは？｣


｢んー、私？私は甘いものが好きだなあ｣


｢イメージ通りだね｣


｢なにそれ｣


少し馬鹿にされた気がしたけど、悪い気はしなかった。


それは多分、初対面の時と比べて彼の纏う雰囲気が柔らかくなっていたからだと思う。

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