9.似た者同士 ページ9
「ノートンを追い詰めるようなことを言ってしまった。それも、故意で。…彼の事を嫌っているわけではないのに、何も知らない彼を目の前に無性に苛立ってしまって…。自分がこんなにも醜い感情をもっているなんて知らなかった。……ナワーブ。もし私が、君のような生き方をしていたら、きっと誰も傷付くことはなかったんだ。…私は君が、羨ましい……。」
珍しく饒舌になるイライに、俺は相槌を打つことすらせず黙って耳を傾けた。
奴が感情的になるところは初めて見たかもしれない。
「…お前とアイツの間で何があったか知んねえけど、俺は嬉しいよ。お前がそうやって感情を表に出したことが。」
「…何を…、」
「お前と俺、決定的に違うものは自分に正直かそうじゃねえか、だ。」
イライは俯いていた顔を少しあげ、俺の話を聞いている。
「俺は馬鹿だからお前みたいに気遣いなんか出来ねえんだよ。腹が立ったら怒るし、手に入れたいものは求める。だが、イライ。お前は違うだろ?何でも一歩先を見て他人を気遣って、自分の事なんかそっちのけ。」
「……。」
「素直に尊敬してるよ。お前のそういうところ。けど、お前自身はそれで満足できるのか?他の奴ばかりを尊重して、お前はこれから幸せになれるのかよ。」
イライは何かを言おうと口を開きかけるが思い留まったのか、諦めたようにまた口を結んだ。
「…ま、部外者の俺が口出ししたところで何もなんねえかもしれねえが。お前はさ、もうちょっと欲張りになってもいいと思うよ。」
喋り過ぎたな。
呆れ半分で思わず鼻で笑う。
けれど、考えるように黙っているのを見ると、何か思うところがあったのだろう。
「…ナワーブ…。君は、」
「わりぃ、ちょっと小便行ってくるわ。」
あとは自分で考えろ。
そう言ってリビングを後にした。
扉が閉まる前に、「ありがとう」と聞こえた気もする。
…これを機に少しイライには考え直して欲しいと思った。
奴の他人を優先する性格はゲームにも出ている。
相棒である梟を胸を痛めながら仲間の為に犠牲にしたり、必要以上に肉壁をしたり。
何も口出しはしてこなかったが、俺はずっとイライのそんな姿を見て煩わしく思っていたのかもしれない。
自分を疎かにして他人ばかり気遣うその様を見て、放っておけなかった。
「壁になるのは俺の役目だ。」
(傷付いていいのは、仲間の犠牲の上でのうのうと生きてきた自分だけなんだ。)
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【湖の宝石】(プロフ) - 最近また見直しているんですけど、ニヤニヤが止まらなすぎて親に白い目で見られる事もありますが、何度読み返してもやっぱりこの作品が第五人格で一番大好きです!素敵な作品を作ってくださり、そして今でも更新してくださり本当にありがとうございます!! (2022年6月21日 23時) (レス) @page1 id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
いくらちゃん。(プロフ) - 暁郗さん» イラストを褒めていただき嬉しいです!ナワーブくんはシリーズ1へお引越し、2にはイライくんのイラストが来るのでまた見てやってください! (2021年8月10日 13時) (レス) id: 30d3d73915 (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 俺の推し(ナワーブ)がイケメンすぎて辛い、ありがとうございます……………。 (2021年5月4日 9時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 待って待って待ってください、ナワーブ君のイラストイケメンすぎじゃないですか??え、推しが尊い(遺言) (2021年5月4日 9時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
いくらちゃん。(プロフ) - りなさん» 少しでも補給になっていれば嬉しいです!笑 (2020年8月31日 22時) (レス) id: 30d3d73915 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いくらちゃん。 | 作成日時:2020年4月10日 21時