21.恩 ページ21
どうやら私が一番風呂だったみたいだったから、湯船には浸からなかった。
それでもゆったりと髪や身体を洗って、自室でお風呂上がりのケアをしていれば40分なんてあっという間。
リビングへ向かうと既に食卓には美味しそうな料理がずらりと並んでいて、私が着席すると、それに合わせてか皆が席に着いた。
そして今はイソップの作ってくれた料理を頂きながら、仕事場でのあの出来事を話している。
「それで、陽菜ったらイケメン見せろーとか言ってきてさ…。面倒だったから手っ取り早く話切り上げちゃったけど、適当に断っとくね。」
「はは、楽しそうな職場だね。」
私が呆れ半分に伝えると、イライがそう言ってにこりと笑う。
他人事だなあ。
「…まあ、楽しいけど……。ん、このサラダ美味しい…!これもイソップが作ったの?」
「まあ、はい。」
ひと口食べたサラダが凄く美味しくて思わず声を上げるけれど、イソップは当たり前ですよ、みたいな淡々とした調子で答える。
もっと喜んだっていいのに。
なんでも昼間にテレビで放送していたクッキング番組を見て作ってみたのだとか。
意外と行動力あるんだな…。
それにしても、
「イソップの料理センスはもはや天性の才能ね。家政婦でもさせたら儲かりそう。」
「!」
ふと、思いついたことを冗談で言ってみれば、イソップがぎくりと大きく肩を震わせた。
「ハハハ!勘弁してやれって。他人の家に上がり込むなんて金をいくら積まれたところでコイツには叶わねえよ。」
庇っているのか貶しているのかよく分からない発言をするナワーブにノートンが鼻で笑う。
「キミの場合は別の問題で即クビになりそうだけどね。」
「ああ?」
「ハイハイそこ喧嘩しない。」
多分私がいない間もこんな調子だったんだろうな。
その様子を想像して苦笑いしていれば、不意にイライがうーん、と小さく唸る。
「でも確かにずっとタダ食いさせてもらうわけにもいかないね。……あ、私が働きに出ようか。」
名案だとばかりに手を打つので私はぶんぶんと首を横に振った。
「いやいやさっきの冗談だから…。あんた達いつ帰るか分かんないのに働かせられないよ…。心配しなくても大丈夫。本当に気にしてないから。」
「けど…」
少し残念そうに眉を下げているが、もしイライが働きにでちゃったらこの家にしっかり者がいなくなってしまう。
そうなると私も仕事どころじゃあない。
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【湖の宝石】(プロフ) - 最近また見直しているんですけど、ニヤニヤが止まらなすぎて親に白い目で見られる事もありますが、何度読み返してもやっぱりこの作品が第五人格で一番大好きです!素敵な作品を作ってくださり、そして今でも更新してくださり本当にありがとうございます!! (2022年6月21日 23時) (レス) @page1 id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
いくらちゃん。(プロフ) - 暁郗さん» イラストを褒めていただき嬉しいです!ナワーブくんはシリーズ1へお引越し、2にはイライくんのイラストが来るのでまた見てやってください! (2021年8月10日 13時) (レス) id: 30d3d73915 (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 俺の推し(ナワーブ)がイケメンすぎて辛い、ありがとうございます……………。 (2021年5月4日 9時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 待って待って待ってください、ナワーブ君のイラストイケメンすぎじゃないですか??え、推しが尊い(遺言) (2021年5月4日 9時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
いくらちゃん。(プロフ) - りなさん» 少しでも補給になっていれば嬉しいです!笑 (2020年8月31日 22時) (レス) id: 30d3d73915 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いくらちゃん。 | 作成日時:2020年4月10日 21時