また間違えた。 ページ2
「…ただいま」
家。本当は家なんて思いたくないけど、家。
一歩足を踏み入れれば、きついアルコールの匂い。
お酒だ。父さんがお酒を呑んでいる。
父「おい、文也！片付けろ！なんだこのきったねぇ部屋は！」
お前が呑んで散らかしたのに。
なんで僕が片づけないといけないんだ。
心の内で愚痴を零しながら、チューハイと書かれた缶や、ワインのボトルを拾い集める。
そのとき、割れたボトルの欠片で指を切ってしまい、血が出た。
それを運悪く父さんに見られてしまった。
父「なんでそれ位でケガをするんだ！？この、失敗作！！」
バシン、という鈍い音と振動が耳と頭、其れから痛覚に訴える。
頬を平手打ちされたのだ。口内を噛んだのだろうか、血の味がする。
「…ごめんなさい」
嗚呼ほら。また間違えた。此れで何度？何回目だったっけ？
何度目でもいいか。どうせ僕は父さんの「玩具」にしかなれないんだから。
中也「はぁ…親父、また文也虐めてんのか？」
兄ちゃんだ。帰ってきてしまった。
僕の大っ嫌いな、一日の中で最も苦痛な時間がやってきた。
父「おお、中也！おかえり！酒を飲もうか！」
父さんは、僕には絶対に見せない笑顔で兄ちゃんに笑いかける。
其の顔を見るのが、其の楽しそうな会話が、僕にとっては拷i問だった。
中也「…文也、頬、如何した？」
兄ちゃんが此方に手を伸ばした。
其の手を僕は、反射的に払ってしまった。
父「ﾁｯ失敗作は何処かへ行け、帰って来るな」
そう云って父さんは僕の服で隠れる所をカッターで斬りつけた。
血が流れて、赤い水溜りが出来る。
ねえ、ほら。絆創膏や包帯で塞いでたって、ぽっかり浮き出る傷跡。
中也「やりすぎだ」ﾌｲｯ
嗚呼ほら。また誤魔化した。見て見ぬ振りが上手だね。
庇うふりして庇って無いじゃん。
もうほら、何云われたって誰も僕を望まない。
家に居場所がない。
父「お前なんか、死ねばいいんだ、失敗作！」
「あぐっ…」
剝きだして痛い痛い。
「大丈夫、体育の着替えはトイレですればいいし、痛くないよ僕。大丈夫…」
強がって痛い痛い。
父「中也！」ﾆｺﾆｺ
「…」
息詰まって痛い痛いんだよ？？
楽に息も出来ない。苦しい辛い悲しい。
僕って失敗作だって。
要らない子なんだって…。
「マラソン大会で3位だったよ！」
父「…」
「…テストで90点だったよ！」
父「お前は何で満点じゃ無い！？」
「ｯ…」
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作者名：萩野千紗 | 作成日時：2023年12月13日 20時
