お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ38)

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お隣さん、三十五日目。ページ38

レトさんとうっしーに見送られて居酒屋を出た。
まだ酔いは覚めてなかったし、下手に口を開けば変な事を口走る可能性もあったので黙っていた。

キヨに肩を支えられたまま駅までの道を歩く。
夜風が頬を撫でて心地良かった。

途中で大きな公園を突っ切っていくことになった。
そこが一番の近道だから、とキヨが教えてくれた。

夜の公園。
所々にある街灯に照らされたベンチの近くで、男女が何やら話し込んでいるのを見掛けた。

「なぁにやってんだか、こんな時間に……」

キヨは呆れたように目を背けた。
私は目を背ける気力もなく、そちらに目を向けたままガン見してしまっていたが、次第にそれが見覚えのある人物である事に気付いた。

「……ねぇ、キヨ、あれ……」

キヨの肩をつんつんと突き言えば、彼も気が付いたようで、目を丸くした。

「……フジ？」

「え、キヨ？……と、Aちゃん……？」

「ねぇフジ君、あの二人知り合い？」

それにしても誰だろ、あの女の人。
馴れ馴れしくて腹立つなぁ。
でも、街灯に微かに照らされたその顔に、何故か見覚えがあって。
ぐるぐると考え続けるうちに、思い出した。

「ち、千夜ちゃん……？」

そう、あの千夜ちゃん。
私の幼馴染みの。

「へ……？……もしかして、Aちゃん……？」

「……知り合い？」

キヨに聞かれたので、『幼馴染みなんだ』と答えた。
それにしても、なんで千夜ちゃんがフジ君と一緒にいるんだろう。
一瞬嫌な考えが頭をよぎったけど、彼に限ってそれはないと思うことにした。

「そう、A。久しぶり、千夜ちゃん」

「Aちゃんだ～！久しぶり～！」

嬉しそうに手を振ってくる千夜ちゃんは変わってない。相変わらず可愛らしく、お人形さんみたい。
その笑顔も、変わってないはずだ。きっと。

「ねぇ千夜ちゃん、フジ君と知り合いなの？」

そう問いかければ、千夜ちゃんはにっこり微笑んで頷く。

「そうだよ。お仕事で知り合ったんだ。フジ君ってば本当にいい人だよね。かっこいいし優しいし！」

「そうなんだ」

最悪の状態が頭の片隅にこびりついて離れない。
どうにか追いやろうとしても無駄だった。

キヨが『もう帰ろう』と促してきたが、どうにも帰れる気がしなかった。
どっちにしろ、気になって今日は眠れない気がする。

「ところで、二人は何してたの？」

出来るだけ柔らかく聞くように心がけた。
だって、私別に怒ってないから。