お隣さん、三十四日目。 ページ37
「それでさぁ、キヨ君が大声で変な事言い出してさぁ」
「んなのいつもの事だろ」
「おいうっしーお前ふざけんな」
相当お酒が入ったからなのか、だんだんみんな声が大きくなってきている。
実はここめっちゃ設備良くて、個室になってるんだよね。
だから他のお客さんから白い目で見られずに済むし、見られていたとしても気付かない。
「あれ、Aちゃんは飲まないん？」
レトさんの言葉に自分のジョッキを見てみれば、まだ半分ほどしか減っていなかった。
酒乱の症状が出るのが怖くてほとんど飲んでなかったな。
「うーん、飲むけど酔っちゃうと私めんどくさいから」
苦笑して言えば、ふぅん、とレトさんは頷いた。
キヨには前々から言ってたけど。
うっしーも察してくれたようだった。
それから、話の方向は次第に私に向いていき。
キヨはともかく酔っているらしい二人から詰め寄られた。
「なぁなぁ、Aちゃんはフジ君のどこが好きなん？てかどこまでやったん？」
最後の一文に問題ありということで、そこに関してはキヨが冷静にツッコミを入れてくれたが。
「優しくて、かっこいいところかな。しかもすごく器用だから、そこも羨ましいんだよね」
「へぇ。確かに分かる気がするわ。それで？他なんかもっと無いの？」
「他……？」
何も思いつかず、お酒を飲みながら適当に話してたら、気を付けていたはずなのに酔いが回ってきたようで。
しまった、と思った時にはもう遅かった。
勝手に変な事を口走る自分を憎らしく思う。
「だってさぁ、フジ君ってば超絶モテるから浮気されてる気がすんだよね〜！！ねぇレトさんもうっしーもキヨも思うよね？ねぇねぇ？？」
「落ち着いてやAちゃん……フジ君もああ見えて一途なとこあるから、浮気なんてしやんと思うよ」
「そうそう。あいつそんなゲスじゃないから。キヨと違って」
「うっしー今なんて言った？」
宥めてくれる二人、うっしーに半ギレするキヨ。
そして私は大声でくだを巻きまくる。
なんてカオスな光景だろう。
「きっとさぁ、私なんかじゃ釣り合わないんだよ！
今頃別の女と飲んでたりすんじゃないの！？」
私何言ってんだろ。
なんで信用してないんだろ。馬鹿みたい。
「と、取り敢えず今日は遅いからお開きにしよ？
キヨ君、ちゃんと家まで送ってってな。頼んだで」
「くれぐれも家に上がり込むことのないように」
「うっせぇな、余計なお世話だわ。んじゃ」
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作者名：緋奈香 | 作成日時：2019年8月13日 6時
