お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ19)

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お隣さん、十七日目。ページ19

泣いちゃダメだ。
そう思っても勝手に涙が溢れてくる。
私が泣く理由なんて無いのに。

「……Aちゃんっ、ご、ごめっ……」

私の腕の中で泣きじゃくる彼には、普段の余裕そうな面影なんて微塵もない。
弱々しくて、でも何処か可愛らしくて。
守ってあげたい。そう思った。

「大丈夫だよ」

そうやって言うのが精一杯。
フジ君に見えないようにそっぽを向いて涙を拭う。
もう一度笑って、自分に言い聞かせる。
しゃんとしろ、A。あんたが泣くな。

フジ君を元気づけるんだろ。
隣にいてやるんだろ。

怖かっただろう。
辛かっただろう。
知らない人から突然家を訪ねられたら、誰だって怖い。本人に悪気がなくてもだ。

少し落ち着いてきたようで、未だに目に涙を溜めたままのフジ君が顔を上げた。
私が彼を抱き締めたまんまだから、顔が物凄く近い事はもはや言うまでもない。

「……あ、ごめん、顔近……」

「あっ」

パッと手を離すと、フジ君は涙を拭ってはにかむように微笑んだ。

「ごめんね、Aちゃん。気遣わせちゃったよね。Aちゃんも無理しないで。辛い事があったら、なんでも相談して。辛い事がなくっても、俺に出来る事があれば」

そう言って、彼は私の顔に手を伸ばし、私の目尻を親指でぎゅっと拭った。
いつの間にか、また泣いていたらしい。

「……ありがとう。私こそごめん。私がフジ君の立場になったらと思うと怖くて。つい涙が……」

「もしAちゃんが俺みたいなことになったら、絶対に俺が守る」

「え？」

思わず聞き返すと、フジ君はきまりが悪そうに目を逸らした。

「だって、俺みたいな思いして欲しくないから。
大事な『友達』だもん。それくらいはするよ」

嬉しくて、頬が緩むのを感じながら、そっかぁと返せば、反応薄っとツッコミを入れられた。
良かった、いつものフジ君だ。

「調子戻ったみたいでよかったよ」

「本当はこんなつもりじゃなかったんだけどねぇ……」

計算外だったよ、と笑う彼の笑顔は、素敵でかっこよくて、それでいて可愛らしい、いつもの笑顔。
微笑ましくて思わずふふ、と笑うと、フジ君が『そうだ』と何かを思い出したように手を叩いた。

「Aちゃんに紹介したい人がいるんだ」

「え？まさか両親？」

そう聞けば、フジ君は顔を真っ赤にして顔の前で手をブンブン振った。可愛いかよ。

「そ、そうじゃなくて。俺の、仲間」

彼は顔が真っ赤なまま言った。