お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ18)

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お隣さん、十六日目。ページ18

＊Fuji side＊

俺はゲーム実況者なんだ、と告げても、Aちゃんは全く動揺すらしなかった。
ただ真っ直ぐ俺を見て、言葉の続きを待っているようだった。

だから俺は、彼女に一切を打ち明けた。
引っ越してきた理由について、全て。
思い出せば思い出すほど怖くて、不快で。
言葉に詰まってしまうこともあった。

でも、Aちゃんは急かすことなんてせずに、静かに頷き、俺の話を聞いてくれた。
全てを話し終え、俺は言おうとしたんだ。

『まだバレてないからいいけど、バレたら今度は、きっとAちゃんの身が危ないと思うんだ。
だから、俺に関わるのはやめた方がいい』

と。
最後まで言ったら、こみ上げる涙に耐えられる気がしない。今だってそうだ。
気を抜けば、一雫が俺の頬を伝ってしまうかもしれない。

しかし。
今まで黙って話を聞いていたAちゃんが突然口を開いたことによって、俺が最後までその台詞を言うことは叶わなかった。

「私は」

咄嗟に顔を上げると、Aちゃんは口を真一文字に結び、今も尚真っ直ぐ俺を見ていた。

「私は、フジ君がゲーム実況者だろうと、『友達』を辞める気は無いよ。自分の身が危ないって言っても、私これでも護身術は心得てるから。
だからその先は言わないで。これからも仲良くしてよ。私から離れようとしないで」

Aちゃんの目尻が微かに輝いた気がした。
……この子は、なんていい子なんだろう。

「……ありがとう、Aちゃん」

今はそれしか言葉が出てこない。
何か生暖かい液体が俺の頬を伝って、膝に置いた握り拳に落ちた。
乱暴に拭うと、それが涙だったことに気付く。

気付けば涙が溢れ出していた。
みっともない。大の大人が、女の人の前で泣くなんて。
きっと彼女も絶望し、幻滅しているだろう。
折角俺の事を認めてくれたというのに。

ふと、唐突に抱き寄せられた。
乱暴に、でも優しく髪を撫でられる。

「……Aちゃん？」

「偉かったね」

なんの事か分からず黙っていると、彼女はそのまま続けた。

「怖かったよね。辛かったよね。泣いていいんだよ。だってキミは頑張ったんだもん」

拭いきれない涙を目に溜めたまま顔を上げると、彼女もまた泣いていた。

「もっと私の事頼ってよ。ねっ？」

そう笑った彼女の笑顔は何よりも綺麗で。
みっともない。惨めだ。そう分かっていても。

──今だけは、彼女に、Aちゃんに、身を委ねよう。そう決めた。