ミルクティーに角砂糖。【進撃の巨人】

ま ち ぼ う け の あ さ ページ4

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　あれは十一時頃だっただろうか。何年か前に死んだ恋人の遺品を、Aの部屋まで渡しに行った。本当は、直前まで迷っていた。渡すべきか、否か。しかし遺品は全て腐敗してしまいこのジャケット以外持ち帰れるものは何もなかったので、やはり渡すことにした。

　昼食は食べていないようだったが、夕食時には泣き腫らした目でエレンと食堂に現れた。

　「不細工な面だな。」

　そう言って通り際に髪を掻き乱すと、Aは嬉しそうに笑いながら、「うるさいです。」と返した。

　俺は少し離れた所で脳内奇行種クソ眼鏡(別名ハンジ)と夕食を食べた。
　クソ眼鏡はソニーがどうとかビーンがどうとか一人でゴチャゴチャ盛り上がっていたが、向こうも向こうで盛り上がっているようだった。



　「……そしたらエレン、『Aさんの好きな花知ってますか……？』って顔真っ赤にして聞いてきたの！アハハっ、もう見てるこっちがキュンキュンしちゃったよー！」

　珍しくペトラが大声で笑っているから、何となく耳を傾けるとどうやらエレンとAの話をしているようだった。
　ペトラの話は今日一日元気が無かったAを元気づけようと、エレンが自分にAの好きな花を聞いてきたという内容だった。それを聞いているオルオやグンタもニヤニヤ笑って真っ赤な顔をしたエレンをからかっている。
　AもAで、頬をほんのり赤らめて照れているようだった。

　気に入らねえ。



　「リヴァイってホントにわかりやすいねえ。」

　ふいにハンジが横から言った。

　「Aちゃんに似合うお花だー、ってあのお花を最初にあげたのは、リヴァイなのにね。」

　そうだ、Aが好きだと言っている花は俺が昔アイツに似合うと柄にも無くプレゼントした花だった。
　それを面白そうにふふ、と頬杖をついて言うハンジに微かな苛立ちが芽生える。
　けど俺は今、コイツよりもエレンに対して苛立っていた。


　俺はこの気持ちを知っている。
　Aが仲良く他の男と歩いている時、Aがエルヴィンに頭を撫でられている時、Aが忘れられない恋人に想いを馳せている時。

　これは、エレンへの嫉妬だ。

　ガキか、俺は。
　思わず自嘲した。



　「私がAだったら、自分が泣いてる時にお花を持ったエレンに優しくされたりなんかしたら、もうどっきゅんきゅんだろうねー。」


　そう言うハンジに、俺はただ「うるせぇ。」と返すことしか出来なかった。
　

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