彼の夢 ページ10
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「あの日、出来なかった事を、今日やり遂げに来た。」
彼は私の手を離し、ポケットから青い箱を取り出す。
ぱか、と開けたその中には
きらきらと光輝く指輪が入っていた。
「 · · · 俺、あの日 東京に2人で行って、色々落ち着いたら プロポーズしようと思ってた。」
「 じゅり、くん · · · 」
知らなかった。
彼が話す度、何度も何度もあの日の罪悪感が蘇る。
「Aのお母さん、今元気?」
彼は指輪の箱を閉め、母について聞いた。
私の母は、あの時の事が嘘のように
元気だ。
あの頃、母は父親と離婚し、
精神がかなり限界をむかえていたらしい。
その為、倒れた と後から聞いた。
「 元気だよ、とても 」
今、母は月に一度の友人との食事会に行っていて家を空けている。
だから、元気な姿を見せることは出来ないけれど。
「そっか、よかった。
じゃあ、もう 俺ら一緒に居れるかな、」
強い安堵感に包まれている樹くんは、
私の隣へと座り直す。
2人の手は、重なり合っていた。
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