六 ページ6
「入るぞ」
「どうぞ!」
障子を開けたのは土方君で、さっきとは違った着流しを着ていた。着替えたのだろう。
さっきまで土方君の話をしていた私は恥ずかしくなり、少し声が弾んだ。
土方君は不思議そうな顔をすると、床に座った。
机にもたれかかり、退屈そうな子供のような表情で私に言った。
「お前も大変だな」
その意味は私にはよくわからなかった。
莉花は慌てて土方君に人差し指を立て、しーと言った。
「何が?」
「別に」
「うん、ほんとなんでもないから」
私は少しイライラした。
これは恐らく嫉妬。
土方君と莉花が秘密を作っているようで、私は嫉妬した。
少し沈黙が続き、莉花が口を開いた。
「私は邪魔みたいやね、お邪魔しました〜」
そう言って口笛を吹いて呑気に歩いていった。
その後ごゆっくりー、と人を煽るような口調で言って、そのまま去っていった。
「呑気な野郎だな、総悟にそっくりだ」
「総悟くん?」
「あー...お前は懐かれてんのか」
その後しばらく雑談を交わし、夕方となった。
*
「んぁ...?」
ゆっくりと目を開けると、視界が傾いていた。
上を見上げると土方君の顔があった。
びっくりして顔を離すと、土方君も寝ていた。
肩にもたれかかって寝ていたのだろう。
規則正しい呼吸をしながら寝る彼。
それを見て、まだ彼が道場に来たばかりの時のことを思い出した。
「(怪我治療して、そのまま寝ちゃったんだっけ)」
無意識に手を彼の顔に伸ばしていた。
そして髪の毛に触れ、持ち上げるとサラサラと落ちていく髪を見つめた。
「綺麗だな...」
女性の髪の様だ。
こんな事、前も思ったっけ?なんて考えた。
髪に触れていると、次は頬に触れた。
「スベスベ...だし」
きっと江戸に出たらモテるんだろうな。
江戸に出たら...彼女、とか作るのかな?
彼の隣に女性が居るのを想像して、心が痛む。
下唇を噛んで、なんとか悲しみを押し殺した。
その時、彼の目がパチリと空いた。
「ぁあ...寝てたのか...?」
私は頷くと、そうかと言った。
何故か頭を撫でられて、私は撫でている手を掴んで笑った。
「ありがとう」
すると彼も微笑み、おうと言う。
こんな当たり前は彼が江戸に発てば無くなる。
「...飯でも食いに行くか?」
急に土方君は言い出した。
彼はまだ眠そうに目を擦っていた。
「私作るよ?」
「たまにはいいだろ」
「...そうだね、行こっか」
_____この時、行かなければ...
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作者名:唐辛子の民 | 作成日時:2018年4月8日 19時