常連さんのツイッター事情【浦島坂田船】 (ページ6)

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ツイート５ページ6

自嘲気味にはぁと息をついてからふとその目線を万年筆に向けるやいなや、無意識にその目は見開かれた。

ツイッターに夢中で気づいてなかったけど、目の前に並ぶ万年筆はどの文具店で売っているものよりもいくぶん素敵で美しく見えて思わず私は感嘆の声をもらす。

ツイッターの画面のままブツリとスマホの電源を切りカバンにしまった私は、気づけば真っ先に目を、否、心を奪われた黒色の万年筆に手をのばしていた。

「値段……っう、ちょっとお高め……」

＊＊＊

きれいに袋に包まれた黒色の万年筆を手渡されてから、ぶらりと店内を見て回ろうと思っていたのにそれはスマホのバイブ音と『上司』という相手の名前で断念せざるをえなくなった。

「……わかりました。明日も出勤、ですね」

電話の向こうの「そうだ。よろしくな」という上司の声を聞き届けてから私は耳からスマホを離して通話終了ボタンを力なくタップした。

明日は休日であったはずなのだが。

思いっきり今日は夜更かししてやろうと思っていたのに。

思いっきり明日は寝坊してやろうと思っていたのに。

「……はぁ」

会社に振り回される社畜。慣れる気がしない。

重くなった気持ちを無意識に紛らわそうとしたのか、自然とカバンに入れた万年筆に目を向ける。

……買ってくれた人から返信くるといいな。

そしていつかツイッターを抜け出して出会ってみたい。

まだまだ夢のような話だけど。

「A、ちょっとこっち来てごらん？」

＿＿＿

　

いつもよりも遅めにお店をあとにした私は、家に帰ってふとスマホの電源をつけるとツイッターのままで電源を切っていたことに気づき、そのまま自分のツイートをあげることにした。