【ディズニー/カーズ】優勝カップをあなたに【disney/cars】

４話 ページ5

『もう、心配したんだから』

「ははっでも大丈夫だっただろ？」

『そうだけど…』

"特に大きな怪我が無かったのは事実だけど、でもタイヤがバーストして危ない目にあったのも事実だよ？"そんな私の思いは彼には届いてないだろう。集まって来た記者達へ向かう彼と対照的に、私は餌食にされないよう、少しだけ彼と距離を取った。

タイヤの整備をされつつ記者達の質問に答えていく彼と、彼の一言一言に悪態をつきながら作業を続けるクルー達。たった今レースが終わったばかりの仲間内のグループで、こんなに殺伐としているチームが他にあるだろうか。遠巻きに眺めながらそんなことを考える。

「クルーチーフをクビにして後悔してます？」

「クビにしたことに後悔はしてないよ。だって一匹狼だから」

また、あんなこと言って…

呆れ顔で彼を見れば、なんと整備をしてくれて心配までしてくれたクルー達を邪魔者扱いした上に辞めさせている！？
慌てて彼らの前に立ち、説得しようと試みる。

『すみません、彼の非礼をお詫びします。あと少しだけお力添えをお願いしたいのですが…』

「悪いねAちゃん。君がいるから我慢してたんだが、あの一匹狼にはもううんざりだ！！他を当たってくれ！」

『そんな…待ってください！』

次々に避けられ、移動車両に乗り込んで去っていくクルー達。物申せずにはいられないと振り返れば、当の本人は記者団に囲まれてニコニコと笑顔と決めポーズを振りまいていた。危機感の無さに脱力してしまう。
まるで一人で戦っているような、いや実際にそうであろう彼に、はぁ…と頭を抱えた。

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