【ディズニー/カーズ】優勝カップをあなたに【disney/cars】

３５話 ページ36

翌日、ピストンカップの王座決定戦という事でアメリカ中が大熱狂との事だったが心は深く沈んでいた。それは彼も同じようだった。時折何かを考えてため息をつく姿は見ていられなかった。

「どうしたの？そんな顔をして」

ピットクルーを務めてくれることになったマックが心配そうに問いかけるも、"彼は何でもない"と言って笑ってみせた。無理をしているのがよくわかって私も気持ちが落ち込んでしまう。
レース用ペイントに変わった車体を見ては皆さんのことを思い出し、寂しくなる。

レースが始まっても気持ちは変わらないようで、普段ならしないようなミスを連発する彼。集中できないようだった。
壁にぶつかりそうになって慌ててハンドルを切り、スピンアウトしてしまった。大丈夫か声をかけようとマイクを入れたその時、

「お嬢ちゃん」

『っドックさん！それに皆さんも！』

驚いて振り返ればドックさんがいた。他にもメーターさん、グイドさん、ルイジさん、フィルモアさん、サージさん、フローさんにラモーンさん。そしてシェリフさん。

来てくれたんだ…

なんて情深い人たちだろう。胸の中に温かいものが溢れる。

「とりあえず、それを貸して貰えるか？」

ドックさんの視線の先にあるインカムを手渡すと、先日したアドバイスのように声をかける。ヘッドホンからは彼の嬉しそうな声が聞こえた。

「クルーチーフが必要だろうとは思ったがここまでとはな」

「もう戻らないって言ってたのに！」

「ああ、だが仕方ないだろう。メーターがさよなら言ってないって」

「さよなら〜！！おっけーもういいよ」

メーターさんの軽い挨拶に笑い声が漏れる。ピットに戻って来た彼には先ほどとは打って変わって笑顔が見られた。ドックさんは必要なことだけを的確に伝えると"お前なら目をつぶってても勝てる"と言いきった。

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