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「最近指細くなったかもしれねえ」
「は?」
「指輪が抜ける」
「あー、サイズ調整しに行く?」
「まぁ、気を付けてれば落ちはしねえけど」
2年前、俺の荷物も全部移し終わって、これで完全な同棲だな、なんて話をしたその日のうちに買いに行ったこの指輪。
結婚指輪とかだったら、裏にお互いの名前や日付を刻んだりするんだろうけど、俺たちは面倒だからと、どこにでも売っていそうなシンプルなシルバーのものを選んだ。別に、婚約指輪でも、結婚指輪でもないから。
家に帰ってそんな話をしていると、営業メールを打っていたこーたがふとスマホから顔を上げた。
「‥やっぱりさぁ、指輪見に行こうよ」
「だから、気をつけてれば落ちねえって」
「や、じゃなくてさ、新しいの」
「は?」
「ケッコン、すんじゃねえの?」
そういえば、2年前そんな話をしたな。
男同士だしできるわけないと思っていたから、すっかり忘れていた。
「‥お前、本当に俺でいいのかよ」
無意識か、そんなことを聞いてみた。俺はヤクザで、元TDDで、危ないことにしか首つっこんでねえし。こいつはホストで、職業を除けばどこにでもいる奴なのに。
俺はこいつに、どんな答えを求めてるんだろう。
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2018年9月7日 23時