ノドカ ページ8
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『長閑だねえ……』
満開の桜が生い茂るの空の下、Aはレジャーシートの上で座りながら、お茶をすする。
沖田はだらしなく横になり、高杉は片方の足を立てながら木によりかかっていて。そして神威は大きく口を開けながら、団子を頬張っていた。
『神威くんさあ、もっと情緒ってもんがないの?』
Aの言葉に、ニッコリと微笑んだ神威は、口の中の団子を飲み込む。そして人差し指を立て、小首を傾げた。
『そんなのあったら、ご飯にかけておかわりしてるよ』
『そうだよね〜。君ってそうだもんね〜』
ほとほと呆れるAは、隣りにいる沖田の子どものような柔い髪へと手を伸ばす。そこには桜の花びらがついており、指通りの良い髪を感じながら、花びらを取った。
『誘ってやすかィ』
『違うわ』
撫でられるがままの沖田は、仔犬みたいに丸い瞳を、気持ちよさによって閉じる。
すると高杉が、彼女の膝の上に頭を乗せた。そして撫でてくれと言わんばかりの物欲しげな目でAを見つめ、下から彼女の頬へと手を添える。
『あ、ずりぃや』
『シンスケ、なにやってるの』
沖田と神威も揃ってAの膝の上に寝転ぶ。Aはやれやれと深い長嘆息を吐いては、彼らの頭にデコピンをお見舞いした。
『長閑だな』
『どこが』
高杉の言葉に小さく笑ったAは、上を見上げて桜色に染まる天井を仰ぐ。隙間から眩しい光が差し込み、彼らの髪に天使の輪っかを作った。
太陽も、月も、星も、皆彼女の直ぐ傍にある。どれも眩しくて目を細めたくなるが、三人はいつもAへ手を伸ばしていた。
『来年は何してんのかねぇ……』
『俺と二人で来てる』
呟いた言葉に対して声を揃えた三人に、Aは片方の眉を下げ、困った時に見せる表情をする。
そんなAへ、追い討ちをかけるように三人は言葉を続けた。
『選んでよ』
『そうですぜ』
『俺か、俺以外か』
『ローランド?』
どこぞのホスト界の帝王かと思ったAは、ふっと吹き出す。そしてケタケタとお腹を抱える彼女につられて。三人も笑い出し、賑やかな声が桜吹雪に乗って、遠く遠くへ運ばれた。
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アリス(プロフ) - 面白かったです! (2022年4月2日 8時) (レス) @page10 id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - めっちゃ続き気になります!更新待ってます!! (2022年3月29日 7時) (レス) @page10 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - すごく面白かったので、これからも頑張ってください…! (2022年3月24日 18時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
みっ! - ハルさん!ずーっと前から拝見させていただいていて、ふと戻ってきたら銀魂また書いて下さっていて嬉しかったです!ハルさんのペースでがんばってください!楽しみに待ってます (2022年3月14日 1時) (レス) id: 54732a6668 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - ハルさんの紡ぐ言葉が大好きで、また今回も素晴らしい作品を〜と噛み締めて読んでます!✨ (2022年3月2日 21時) (レス) id: 6c0400a92a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2022年2月19日 18時