Seasons ー第1章ー

過去◆2017 新しい恋の予感 ページ44

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初めてのホールツアーに向けて今まで以上にトレーニングを頑張る日々。


スケジュールに入ってない日も事務所のトレーニングルームに向かう日が増えた。



「おはよーございまーす」



トレーナーさんらしき人に声を掛けて黙々とスピナーを漕いでると視線を感じた。何気なくそっちを確認すると、そこにいたのはトレーナーさんではなくLDH所属の――



「すみません、漕いでる顔があまりにも迫力ありすぎて見入っちゃいました」



ははは、と笑いながら失礼な言葉を言い放ったのは―――劇団EXILEの佐藤寛太さん。


たしか、いっちゃんと同郷で仲良いんだったっけ？



「…俳優さんでもちゃんとトレーニングするんですね」



嫌味ったらしく返すと、佐藤さんはにやりと笑った。



「ふはっ、雪永さんって負けず嫌いなんだ。さすが男所帯の中にいるだけある」



何なの、この人。嫌な感じ。



「でも――無理はよくないっすよ。足首痛めてるんじゃないですか？」


「え？なんで、」



リハーサル中に痛めた右足首。メンバーの誰にも気付かれなかったのに、どうして？



「がむしゃらに頑張るのもいいですけど、無理したら意味ないよ。ほら、テーピング巻いてあげるからこっち来て」



慣れた手付きでテーピングをする佐藤さんをじっと見つめる。伏せられた顔。睫毛長いなぁ、なんてぼんやり考えてると顔を上げた佐藤さんと視線が交わった。



「あ、俺格闘技やってたんで。だからテーピングするの慣れてるだけっす」


「――…ありがとうござ、います、」


「はは、なんでそんなぎこちない言い方？面白いな、雪永さん。もしかしてあんまり男に免疫なかったりすんの？だとしたら、めちゃくちゃかわいいな」



ぽんと優しく頭の上に置かれた手のひら。



秋の終わり。


これが新しい恋の始まりだとはこの時は気付かなかった―――





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