Seasons ー第1章ー

過去◆2017 この痛みを忘れないために ページ43

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【side慎】



リハーサルが終わってさぁ帰ろうとした瞬間、後ろからリュックを引っ張られた。



「ねぇ、まこっちゃん。ピアス空けたいんだけど空けてくれる？」


「いいっすけど。トラガスですか？それともへリックス？」



俺の問いかけに首を横に振ると、徐に着ていたTシャツの裾を捲った。



「おへそがいいんだけど」



「は？」



先輩相手に「は？」なんて絶対言っちゃだめなのはわかってる。いや、でもこれはおかしすぎるでしょ。



「え、え、待ってください。本気で空けるつもりですか？」


「うん、そうだよ。LIKIYAさんとマネージャーさんには許可貰った。陣さんはうるさそうだから言ってないけど。だから、空けて？」


「あ、あの。おへそはさすがに自分空けたことないんで病院行ったほうが…」


「じゃあ一緒に病院行ってくれる？」



潤んだ瞳でお願いされて断る男なんているんだろうか？




―――数日後



寮を時間差で出て待ち合わせ場所に向かうと、すでに先に出た雪さんが柱に凭れかかっていた。


立ってるだけなのに絵になるなぁ。


ぼーっと見つめてると俺に気付いた雪さんが手を振って駆け寄ってきた。


傍から見ればデートしてるように見えたりすんのかな？



「あーー、だんだん怖くなってきたよぉぉ。まこっちゃんに付き添って貰って正解だったな」


「なんで俺なんすか？健太さんや樹さんのほうが仲良いじゃないですか」


「ふたりは反対しそうじゃない？」


「…どうして空けようと思ったんですか？」


「痛いとさ、何もかも忘れるじゃない？だから空けようかなって」



ん？つまり、どういうこと？



「じゃあ、まこっちゃんにだけ特別。他のみんなには内緒ね」



人差し指を口元に当てるとふわりと微笑んだ雪さん。



「好きな人に彼女できちゃって。だから気持ちにケジメつけるために空けたいんだ。それともうひとつは好きだった証を残したくて。ふふ、重いでしょ？私って」



雪さんにそこまで想われる男ってどんなヤツなんだろう。


その男の正体を知るのは、もう少し先の話。




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