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「ちょっと待った。」
いつの間にかサンドウィッチから手を引いて、逃げ出そうとしていた少年の腕を、咄嗟に掴んで引き止める。
少年の青い瞳が恐怖に染まった。
左手に持ったままだったそれを差し出しながら、一緒に食わないかと首を傾ければ、数秒ぴたりと固まった後にサンドウィッチは少年の手に渡った。
「おいで。」
自分の隣に座るよう、ベンチをトントンと叩けば、少年は大人しくそこに腰掛けて包装紙を弄り出した。
それを横目で確認してから、ごそごそとバッグの中を漁る。
「一緒に」とは言ったものの、手持ちのパンはそれきりで。
だからといって少年から分取るつもりもない。
唯一持っていたミントタブレットをいくつか口に放りこんで、サンドウィッチを頬張る少年を眺める。
3分の1ほど食べ進んだ頃、少年がむせたところで、飲み物がないことに気がついた。
生憎、飲みかけのペットボトル飲料しか手持ちがなかったため、一度口をつけて何も細工していないことを見せてから、少年へと差し出す。
「口ついたもので悪いけど、何にも入ってない証明にはなるだろ。」
言葉でそう付け足せば、少年はおずおずとした手つきでペットボトルを受け取り、口をつける。
そしてまた、きらきらと目を輝かせて、あまりに美味しそうに食べるので。
俺が美味いかと聞けば、ちろりとこちらを一瞥した後、少年はまたサンドイッチにかぶりついた。
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作者名:susu” | 作成日時:2023年8月18日 22時