UNTITLED【dcst夢】 (ページ4)

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杠に礼を言いその場を後にした千空一行は、クロムら数名の化学王国民を交えて話し合いを始めた。
話し合いといっても、身内も居ない中一人復活してしまった幼い少年のための親睦会のようなものだったが。

「Aちゃんのその楽器、なんてやつなの？俺が知ってるトランペットとはちょっと違うみたいだけど。」
「ポケットトランペット。管の長さは普通のトランペットと一緒だよ。」
「へぇー」
「吹いてみる？」
「いやいや、リームーリームー！！」

Aと名乗った少年と化学王国民──主に石上村の人々との関係はより良いものへと発展していった。
初めは敬語にさん付けであったAだが、敬語は要らないとコハクやクロムを筆頭とした村の若者がしつこく迫ったことによって砕けた口調で喋るようになり、笑顔も増えた。

「そのポケットトランペットってやつ、Aは吹けんのか？」
「うん、僕の楽器だから。」
「Aの吹いてるとこ、見てみたいんだよ！！」

１日練習しないと３日戻るというのは、恩師からの教えである。
石化から復活してからAが過ごしたのはまだ数日だ。
だがしかし、Aが眠っている間にも時間は流れていた訳で。
もし３７００年分自分の腕が衰えていたらと考えると、恐ろしくて仕方がなかった。
そこまでいくと最早マイナスであるし、そもそもたとえばの話なのだが。

「起きてからまだ一回も吹いてないし、ちょっと練習してからでもいいかな？」

眼を輝かせて自身の演奏が聞きたいと言う２人に、Aは少し考える素振りを見せてからそう答えた。
ぱあっと表情を明るくして頷いた彼らに、生半可な演奏は聞かせられないなとトランペットを持つAの手に力が入った。