な ページ3
───午後。今日は座学ばかりで飽きてしまう。
同級生を横目に見てみると、白髪の男、五条悟は完全に机に伏していて、その奥の硝子も腕を組んで下を向いている。どうやら二人とも眠っているようだ。
今日は天気が良く、教室に入り込む午後の日差しはとても暖かいから、眠ってしまうのも仕方ない。
先生も諦めているのかこの二人には何も言わず、淡々と黒板に文字を滑らせていた。
半分開けられた窓からふわりと風が吹いて思わずそちらに視線を向けると、左隣の彼と視線が交わる。
『…ぁ……』
……まさか目が合うなんて思わなかったから。
不意に合わされた視線に小さく声が漏れた。
すぐに正面へ視線を戻すが幸い先生には聞こえていなかったようで、未だ教材を見ながら話し続けていた。
夏「………」
トントン、と机の角を指で叩かれる。
今度こそしっかりそちらを向くと、渡されたのは二つ折りの紙。彼のノートの端が少し雑に破れているのが見えたから、多分それだろう。
恐る恐る開いてみるとそこには綺麗な字で、
”昨日はよく眠れた?”と書いてあった。
……夢じゃなかった。
いや、私が眠れている時点で夢ではないことは確実なのだが、どうしても信じられない節があったのだ。
だって、何を試しても眠れなかった私が、たったあれだけで熟睡出来てしまうなんて。
持っているだけで滅多に使わないシャープペンシルを走らせる。
”ぐっすり眠れすぎてびっくりした。”
彼の文字の下に書いて、ポンと投げる。
受け取った彼はそれを見るとまた何かを書き、私の机に投げる。
”今夜も必要かな?”
『!』
思わずパッと彼を見ると、人差し指を口に当ててシーっと微笑まれた。
その瞬間、背後の陽が彼を覆い、そこに出来た影が怪しく揺らめいた気がした。
……男のくせにいちいち色っぽい。
少し腹を立てながら彼の無駄に整った文字の下に書いた。
”お願いします。”
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すみっことかげ(プロフ) - え?!本当ですか?!そんな!こちらこそ嬉しいです!私も密かに“泣き虫”からのファンなのです。ずっと陰ながら応援させていただいてました(告白)!!実弥さんも夏油さんも最高にかっこよくてキュンキュンさせてもらっておりました!! (2021年10月23日 8時) (レス) id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
凛愛(プロフ) - すみっことかげさん» コメントありがとうございます!!!いや…まさかすみっことかげ様からこんなに嬉しいコメントを頂けるとは思っておりませんでした…(´TωT`)すみっことかげ様の夏油さんの小説、読んでます(´TωT`)ありがとうございます…めちゃくちゃ嬉しいです!!!! (2021年10月22日 22時) (レス) id: f83a603b36 (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - 綺麗すぎる文章に落ちました。そして最後のオチに私の心は持ってかれました。素敵すぎるクズ夏油さんをありがとうございます(最大の褒め言葉)!! (2021年10月20日 4時) (レス) @page10 id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
凛愛(プロフ) - うらにわさん» WAA!!URESHII!!!ARIGATOU!!!SUKI!!! (2021年7月15日 19時) (レス) id: f83a603b36 (このIDを非表示/違反報告)
うらにわ(プロフ) - WAO!!!SUKI!!!ZENBUSUKI!!! (2021年6月30日 22時) (レス) id: 9bef666aed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛愛 | 作成日時:2021年6月28日 21時