22話 ページ23
学校から出て少し進んだところで、
「見つけた」
数メートル先に見えた背中。Aだ。
「A！」
自分が想像していた以上の声量が出て自分でもビックリする。…自覚せず、かなり焦っていたんだろうな。
俺の声が聞こえたらしいAがピタッと歩みを止める。小さく見える背中を見つめても、振り返ってはくれない。
俺は急いでAの元まで行き、もう一度彼女の名を呼んだ。
『……』
避けずに振り向いてくれたAの顔は、曇っている。
その顔にさせたのが紛れもない俺自身だと理解してしまえば胸が張り裂けそうな感覚が俺を襲う。
「引き止めてすまない。
…どうしても言わなければいけないことがあるんや」
『…うん』
準備していたとはいえ、いざ口にするとなると途端に緊張してくる。普段あまり緊張しないのに、こういう時だけ…。
「昨日はすまなかった。Aの気遣いに頼れんくて」
『…ううん。私もちょっとムキになりすぎた』
「謝りたかったんだ。昨日からずっと」
よかった。ちゃんと言えた。ちゃんと謝ることが出来た。
少しばかりの安堵感。
『私も。…ごめん、あのまま生徒会室に戻らなくて』
「いや」
そうやってお互い謝り合っている中で、ずっと俺の頭にあったのは、トン氏の言葉だった。
＿＿仲直りする流れで告白してもええんやで？＿＿
その言葉が昨日から離れてくれなくて、俺を悩ませる原因の一つになっている。
今はまだ、と思う反面、自分が口にできなかったことを伝えられるチャンスなのではとも思っていて、結局今この瞬間まで決めあぐねているのだ。
『グルさん』
「なんだ」
『なんでも話してとは言わないけど、私もグルさんの助けになりたい。
今の私が少しだけ変われたのは、グルさんのおかげだから。利用しろって言ってくれたけど、グルさんも私のこと利用していいんだよ』
「あぁ…」
何も言わなければ、このままの関係でいられるのかもしれない。このままの、Aが信頼してくれている俺であり続ければ……。
…………、でも。
「A」
『ん？』
「今から俺は、お前のその気持ちを仇で返すようなことを言うかもしれない」
『え…？』
覚悟を決めろ。
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作者名：煽田 -アオタ- | 作成日時：2022年6月19日 21時
