19話 ページ20
『…グルさん、元気ない？』
「いや、そんなことはない」
元気がないわけではない。ただ、急にどうすればいいか分からなくなったのだ。
どうやって接すればいいかとか考えるけど、今さらAへの対応を変えるのもおかしな話だと冷静になる。
『今度、整美委員の活動で花壇の花植えするみたいでさ、経費の案が出てるんだけど、確認してもらえる？』
「ああ」
定期的な活動だし、どうせ前回と同じ額だろうと確認する。
が、前回より多少額が上がっている。
「この、新しい鉢って必要なのか？」
『…どうなんだろ。古くてダメになったって話は聞いてないけどな』
「少し確認が必要だな。必要経費であれば引き落とすんだが」
『そうだね』
業務的な話。こんな話、久しくしてなかった気がする。最近は何気ないような、当たり障りのない話ばかりしていたからな。
むしろ業務連絡ばかりだったはずなのに…。
『なんか、こういう真面目な話、久しぶりだね』
クスリと笑うA。まさか自分と同じことを考えていたとは思わず、なんかよくわからんがテンションが上がった気がした。自分らしくない…。
「そう、だな」
『……やっぱり、グルさん少し変』
Aの表情が曇る。
「いつも通りだ」
『いや、なんか違うよ』
「そんなことない」
『悩んでることあるなら話聞くよ？』
「……Aには、言えない…」
お前のことで悩んでるんだよ。…なんて言えるわけない。お前には、言えないんだ。
そう言った瞬間、さっきまで少し怒ったような顔をしていたAの顔が、急に悲しそうな、無理矢理取り繕うような笑顔に変わった。
『そっか、そうだよね！もっと仲が良くて別の人がいいよね！というか女子の私より男子の方が話しやすいか！』
「あ、いや、」
『…ごめ、ちょっと、先生のところ行ってくる』
「、A」
彼女の悲しそうな、歪んだ顔が脳裏にこびりついて離れない。
「クッソ、最悪だろ…」
タイミングが悪い。自分の気持ちを自覚してからすぐに喧嘩してしまうなんて、何やってんだよ。
バカだ…。
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作者名：煽田 -アオタ- | 作成日時：2022年6月19日 21時
