1話 ページ2
『グルッペンくん、明日の定例会のことなんだけど』
「あぁ。
いつも通り各班の今月のまとめと反省をして、今後の流れを把握しよう」
『おっけー』
野上A、彼女は俺と同じ生徒会の役員で、いわゆる人気者ってやつだ。
優しくて、顔も良くて、頭もある程度良くて、運動は少し苦手で、ただいい子ちゃんなだけでなく、ちゃんと愚痴もこぼす、人気者の条件をクリアしているやつ。
俺は、こいつのことがあまり好きではない。
嫌いなわけではないが、あまりにも暗い部分を見せないものだから、人間味がなくてつまらないのだ。
『それにしてもさー、私とグルッペンくんの2人だなんて、久しぶりだよねー』
「まぁ、言われてみればそうだな。今日はトン氏も他の用事があるみたいだしな」
『トントンくん有能だからいろんな人に頼られてるよね！』
「お前も大概やろ」
『グルッペンくんには言われたくないなぁ』
楽しそうにクスクスと笑う。
当たり前だが、本当に楽しそうだ。
それゆえに
「……やめたいと思う時はないのか？」
『え？なにが？』
「いつ何時でも笑顔を振りまくことは、辛くはないのか？俺にはそんな器用なことはできん」
彼女の破顔が一瞬崩れる。
『え？
…いや、辛いって、別に毎日普通に生活してるだけだよ？』
「…そうか。まぁ、そういうことなら、俺が口出しすることではないな」
Aは、きっとこれからもそうやって生きていくんだろう。
なら、俺が彼女を変えようとするなんて無意味なことをする必要はないということだ。
たかが友人の俺にとやかく言われたくはないだろうし。
『……ねぇ、グルッペンくん』
「なんだ」
『私、辛そうに見える？』
夕方の生徒会室には夕焼けが射し、できた影が彼女の表情を暗く隠す。
「いや、まったく。
だから俺は…お前を好かん」
彼女の人生観を変えてやるほどのことは、きっとないはずだ。
俺には分からない、Aの信条があるんだ。
『あはは……、嫌われちゃった』
「嫌いとは言ってないぞ。俺は人間味のあるやつが好きだからな、お前は完璧すぎる」
『…そっか。グルッペンくんには私はそう見えてるんだね』
「ああ。だから辛くはないのかと質問したんだ」
『その質問に答えるとしたら、辛くないよ。
だって、』
日が傾き、Aの顔を隠していた影がいなくなる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：煽田 -アオタ- | 作成日時：2022年6月19日 21時
