S.O.KISS FK ページ15
Kside
バーテンダーをやってる傍で、客に誘われたら自分が乗ることもあった。店を閉めた後にホテルに直行する夜もあれば、連絡先渡されて後日に会う人もいた。
もちろん誰でもOKしているわけじゃない。
まず、女は面倒だからどんだけ美人でもダメ。
男は…顔が好みだったら。と、いう感じ。
基本、2度目もなかった。全員遊びだから、1人につき一晩でいい。代わりはいくらでもいるのに、執着して面倒なことになるのも御免だ。
だけど、なんでお前とは、何度も夜を繰り返すことを許したのだろうか。
いや。許したんじゃない、こんな考えの俺の方から、お前との2度目3度目を求めたのだ。
「…痛、」
それでも遊びに変わりはなかったはずなのに。
女と抱き合っているのを見てしまった今、血が滲むほど唇を噛んだのは何故だろうか。
・
「今日このあとなんかあんの」
「…まあ、今晩はちょっと」
「ふーん。まー北山さんいっぱい相手いそうだもんね？？」
「…別にそんなことはねーけど」
本当は何もなかった。けれど、離れた方がいいと思った。
店に来るなとは言えないが、俺から行かないことくらいはできる。
「…藤ヶ谷さんこそいっぱいいるでしょ」
「別にそんなことないです」
「ふーん」
じゃあ昨晩、終電直前の改札前で、抱き合っていた女は誰だ…何て聞けやしない。
誰だろうと俺は藤ヶ谷さんにとって口を挟める立場じゃないからだ。
しかも…よりによって、男じゃなく女って。
藤ヶ谷さんは俺に相手がいっぱいいそうだと言った。
それはきっと、会おうと約束したり、呼んだら来てくれる人がいるという意味だろう。
約束してわざわざ会う人なんて、お前しかいないのに。
今や、お前のせいで誰とも一晩の関係も持たなくなったのに。
「じゃーまた今度ね」
もっとしつこく誘ってくれたら良いのに、なんて思ってしまった。
この男に俺は、どれほど面倒な男へと変えられてしまったのだろう。
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
