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Kside
「お兄さん今日、どう？このあと」
「…遠慮しときます」
「えー結構好みなのになー」
そう言った相手は、俺も嫌いじゃない顔だった…けど、行く気にならない。
「今日だけ。だめ？」
「あー…」
最近はめっきり藤ヶ谷としかそういうコトをしていない。
…意外と他の人と気分転換にしてみたら、変わるかもしれない。
「行こうよ。待ってる」
迷って返事はしなかったが、無言は肯定と捉えられたのか、閉店後に店に出るとその客は前に立っていた。
いい？と伸ばされた手を握りはしなかったが、黙って隣を歩いた。そしたら腰に手を回されたが、振り払うこともしなかった。
「は、も、やめて…っ」
俺はなんて運が悪いんだろうか。
たまたま気が変わって今日久々にこうしてついてきた奴が、多分ヤバい奴だった。
「きもちい？きもちいでしょ」
「やら、、きもちく、ぁい…っ」
多分、変なものを飲まされた。
強い酒も口移しで無理やり何回も飲まされて、揺さぶられるたびおかしなくらい頭がぐらぐらする。呂律も回らないし、力も全然入らない。
「いった…っっ！」
思い出したくもない夜になった。
・
「北山さん！」
「…あ、」
「久しぶり。休んでたの？」
比較的クールな藤ヶ谷さんが、明るい声で笑顔で、こんな風に店で声を掛けてきてくれて。外に出てきてよかったと思えた。
今まで散々色んな人と遊んでいたのにも関わらず、初めて怖い思いをして思ったよりダメージを喰らった俺は、3週間ほど仕事を休んだ。藤ヶ谷さんに会うのは1ヶ月ぶりだ。
「連絡返ってこないし、店いないしどうしたのかと思った」
「あー…ごめん。色々あって」
ずっと来てくれてたんだと嬉しくなってしまう。
…向こうにとっては体目当てだとわかっていても。
「なんかちょっと…やつれた？」
「…そうかな。一人暮らしだから適当でね」
「じゃ、今度何か美味しいもの食べ行く？」
「…え？」
思わずドリンクを作る手が固まった。
食べに…なんて、好きでもないやつとそんなこと面倒だと思わないのだろうか。
「あー…そーゆーのはいらないか」
「あ、や、いや！行こう。行きたい」
「え、本当に？何が好き？調べておくよ」
「何でも、いい」
藤ヶ谷さんとなら…何でも良い。
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
