第１９話 ページ21
合宿最終日は父兄からの寄付で、バーベキューが開かれることに決定している。
監督達の計らいで流しそうめんもあるということを聞いて治の気分は上々の筈が、なぜかどこか暗い面持ちである。
試合のスコアをとっているAの横で北が汗を拭いながら言った。
北「あいつがバーベキューの話題でテンション上がらんのは珍しいな」
『治くんはご飯がお好きですもんね。お料理もお作りになるので、てっきり楽しみにしていらっしゃると思っていました…』
尾白「え？あいつ、飯とか作るん？」
『はいっ！おにぎりをこの前いただきました！』
((それ料理とちゃうやん…))
先輩の表情の意図は読み取れず、不思議そうな顔をする彼女に二人は適当に誤魔化してその話は終わった。
間も無くして、バーベキューが始まろうとしていると、率先して選手達が手伝いにやってくる。
星海「A、それ貸せ。重いだろ」
『いえ！これは空なので、大して重くな…』
治「A〜。これどこに置くん？」
Aの背後からひょっこり現れた治をギンッと睨みつける。
それを笑って一蹴すれば、Aの手を引いてその場を立ち去った。
昼神「光来くんってなんっか、決まんないよね」
光来「うっせえ！俺はただ手伝いに来ただけだ！」
昼神「早くしないと、もう俺ら今日の夜には帰んなきゃいけないんだよ」
光来「…わかってる」
昼神「まあ、春高で会えるだろうけどね」
光来「わかってる！！」
手を引かれているAは目をぐるぐると回しながら、歩いて行く治の一歩のデカさに必死について行く。
『あ、あの、治くん、早…！』
治「あ、ごめん」
『いえっ、あの、その置き場でしたらあっちですよ！』
治「反対？こっちやなかったか」
『はいっ。珍しいですね。治くんがボーッとしているのは…もしや熱中症に！？』
目を丸くして額に手を当てるAに、驚いて少しのけぞった後、大人しくされるがままになる。
先程までの暗い雰囲気を見ていただけあって、彼女は体調不良を疑っていたのだ。
『熱は…ないですね。どこかお辛いところはありませんか？』
治「ん…ない。別に俺体調悪ないし」
『え"！？そ、それは失礼いたしましたっ！まさかお元気な方にあらぬ疑いを…！』
オドオドと弁解を始める彼女の肩に、治は頭を乗せた。
『お、治くん！？ど、どうされましたか！？』
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作者名：さくさくぱんだ | 作成日時：2020年6月1日 13時
