青い春を駆ける【稲荷崎】 (ページ22)

今日:11 hit、昨日:3 hit、合計:84,213 hit

第２０話ページ22

『お、治くん！？ど、どうされましたか！？』

動揺して手をギクシャクと動かす彼女の動きに笑って、それから小さく言葉を吐いた。

治「…ちょっとだけ」

そう言えば、何かを読み取ったのか静かになって手が止まる。

蒸し暑い空気も、蝉の音も遠くに聞こえる。

治「俺な、お前の前で喧嘩した時な」

『…は、はい？』

治「…Aのこと突き飛ばして、飛んでった時「こんなに弱かったんやなあ」って思ってん」

『あの時は大変失礼しました本当に私は筋力というものが皆無でしてこれからジムに毎日通』

治「ええから。お前はそのままでええねん」

『そのまま、？』

最初自分たちが無理矢理連れ込んだ部活。

もしかしたら嫌なのかもしれないと、ふと思うこともあった。

みんなの見えている表面だけが彼女の全てじゃないし、治達が知らないことをきっと佐久早達は何倍も多く知っている。

それを思うと、どことなく悔しかった。

治「スクイズみんなに笑顔で渡して、ヘラヘラ笑っとるお前が1番ええから、そのまんまでええよ。

なんも変わらんで、ここにいてな。

他んとこ行かんといてな」

表情は見えずとも、珍しい不安な声を聞いてAは元気に返した。

『はいっ！ずっと一緒です！』

治「うん。ずっと…は無理やな」

『た、確かに！それは難しいですね…！』

治「あっ、じゃあAが俺と結婚したらええんちゃう？」

『けっっっ！？』