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朝、目が覚めた。暖かくて、少し息苦しい。
お腹に回された腕から目線をあげれば、まだあどけなさが残る少年の顔が目の前にあった。
「…………はよ、」
私の視線に気づいたのか、半間くんは目をうっすら開けた。顔が少し緩んでいて、彼の頬を指でなぞる。
その指を掴んでカプリと咥えてきたので、指を折り曲げて歯を弾く。これ、ちょっと痛いんだよね。
くつくつと、小さく笑いあった。
「なぁ、買い物行こーぜ♡」
シャワーを浴び終えた上裸男が突拍子もなく言った。
もちろん答えは、
「いやよ。半間くんデカくて目立つし、どーせ指名手配されてんでしょ?」
Noだ。リスクがありすぎる。もともと私なんて、闇市で買うような人間なのだ。
「あー?だりぃこというなよ。服もねぇし食いもんもねぇし、いーじゃんかよぉ。」
湿った肌で抱きしめられ、不快感を覚える。
私は顔が割れてないからいいが、半間くんの道連れだけは御免だ。
おねがいーだの行きたいーだの駄々をこね続ける半間くん。うーん、
……でもたしかに生活必需品を揃える必要性はある。
…………あれか、サツにバレなきゃまぁ、いいのか。
「半間くん未成年だったよね?」
「そうだけど。」
「……顔バレはしてないし、いっか。その代わり、サツ見つけたらすぐ帰るからね。」
「ばはっ、さいっこーのデートになりそ♡」
「デートじゃないよ。……あ、お金。」
「俺所持金500円。」
「でしょーね。」
私は大きなため息をつきながら重い腰を上げた。
アパートの1階にあるポストを開ける。
茶封筒の中身を確認して、また部屋へと戻る。
「うは♡なにその大金!」
茶封筒から出した万札を数えていると、後ろから目をお金にした半間くんが覗き込んできた。
「んー?……うん、全額あるね。」
この確認作業は欠かせないのだ。万札一枚でも足りなかった場合、私は電話の主を殺さなくてはならない。
「じゃ、行こーか。買い物。」
「帰りゲーセン寄ろうぜ♡」
「だめ。必要なもの買ったらすぐ帰るから。」
押し入れから、一着だけ持っていたパーカーを引っ張り出す。
そのパーカーのデザインを見て驚愕した。
「ばはっ、俺とおそろいじゃん♡♡」
違うのにしたいが生憎これしかない。
笑い転げる半間くんに帽子とマスクをわたし、玄関を後にする。
不安しかない買い物がスタートした。
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作者名:すき子 | 作成日時:2021年8月14日 18時