【銀魂】それは、愛情表現。

２９死人に口無し ページ30

生々しい血が流れるそいつの顔は苦痛に歪んでいて。



私は静かに手に持っていた短刀を引き抜いた。



これは護身用にと土方に持たされた短刀。まさかこんなところで役に立つとは思いもしなかった。


私に向けられた獣のような真っ赤な目は、ゆっくりと崩れるように倒れ、やがて動かなくなってしまった。



……頭であるこいつは何とか倒せた。



大きく息をつき、酷く痛む脇腹に手を当てる。制服までもが血に濡れていた。



最後に桐島が放った銃弾。



「ふっ、３発も食らっておきながら私は……」



まだ生きてるなんて、相当この世に未練があるんだろう。本当なら、私よりもミツバが生きるべきなのに。




「……」



きっと、総悟も同じことを思ってるに違いない。


こんな出来の悪い姉が生き延びて、どうしてミツバが死んだのか。自分でも疑問に思う。別に、死にたいワケではない。ただ、自分の存在価値がわからないのだ。



自分が消えることで、誰が悲しむのだろう？誰が涙を流すのだろう？



何年経ってもわからない。




それに、ミツバだってもっと生きたかったハズ。そうしたら……土方と恋仲にだってなれたかもしれないのに。出来ることなら、私も姉として協力してあげたかった。







──本当に？





ふと下を見ると、地面が濡れていた。





血？




いや違う。




──……涙だ。



止まることなく、頬を伝うもの。





何で泣いてるんだ。




しっかりしなきゃダメじゃないか。




「……」




私は、沖田家の長女。




「……くそっ……」




病弱な妹と、幼い弟を守るのが役目。




「……うっ」





お願いだから、



止まってください。







　

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