1止まっていた記憶 ページ2
江戸の治安を守る、特殊警察"真選組"。
そんな真選組の副長を務める、土方十四郎は眉間にシワを寄せた。
土方の目の前では、局長である近藤が頭をかきながら、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「……監察官が来る?」
「うん」
「どういう事だ?」
「いやァ、またとっつぁんの気まぐれでさー。俺にもどうしたらいいのか分からないんだよ、トシ」
完全にお手上げ、と言う代わりに近藤は苦笑いする。
「何でも、俺達真選組の行動を毎日記録して、それを上に報告するのが主な仕事内容らしい。しかも住み込み」
「また面倒な事を……」
「そして女」
「……え?」
思わず、手に持っていたタバコを落としそうになる。
「お、女?住み込みで?」
「うん」
「いやいや、『うん』じゃねェよ。ここが女人禁制だってことは、アンタが1番わかってるだろ」
土方は呆れて溜め息をつく。
少しの静寂のあと、近藤は再び口を開いた。
「沖田A、それが監察官の名前だ」
──沖田A。
その名前を聞いて、土方は驚愕を顔に浮かべる。
「……は?」
最初に発したのはそれだけ。
「トシも、覚えているだろ」
「……冗談だよな?」
持っていたタバコを落とす。
畳が燃えてしまうと騒ぎ始めた近藤を横目に、土方はコクリと生唾を飲んだ。
「……A」
忘れかけていた名前。
自分達がまだ上京する前、武州で共に育ったその女。刀の腕が特別良いというワケではなかったが、勘の鋭さと、冷静に物事を分析する賢さが彼女の武器だった。
しかしAはある日突然姿を消した。
幼い弟と、病弱な双子の妹をおいて。
総悟に何と言って説明しようか、土方の頭はそれでいっぱいだった。
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アオト(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます。な、泣いたですと!?作者として非常に嬉しいです。今のところ続編は考えてませんが、もし新作のネタに困ったら作るかもしれませんf^_^;) (2015年12月11日 23時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - とっても面白いです!!良すぎて読みながら泣いてました!!続編に続いて欲しいです!! (2015年12月11日 15時) (レス) id: cfd050b9dc (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 通りすがりの加藤さんさん» いえいえ!こちらこそ長い間あやふやにしてすみませんでした。 (2015年6月25日 22時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの加藤さん(プロフ) - アオトさん» なるほど!ご説明ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o))) (2015年6月25日 7時) (レス) id: 204089a6f3 (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - イチゴさん» イチゴさんありがとうございます!説明下手ですみません。もし続編or番外編を書くことになったら、この夢主復活までのお話を書きたいと思います(^_^) (2015年6月24日 20時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2015年2月26日 21時