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◆ ◆ ◆
それから数時間後。屯所に帰っていた私は、土方さんに怒られたのか、不機嫌な様子で縁側に腰掛ける沖田さんを見かけた。
なぜ土方さんに怒られたのかと言うと、恐らくひったくり犯だけでなく、何の関係もない民家までバズーカの餌食にしてしまったからだろう。
「沖田さん。すみません」
彼が振り向くやいなや、すぐに謝罪する。
「なんでAさんが謝るんですかィ」
へらっと笑いながら沖田さんは言った。
「……私の右目が見えないから、きっと死角になってひったくり犯に気づかなかったんです。それなのに沖田さんが怒られるのは、何だか申し訳なくて」
「でもまあ、バズーカぶっ放したのは俺ですからね。それに、あれは日常茶飯事なんで別に大したことはありやせんよ」
「でも、そのせいで次の非番がなくなっちゃったんですよね」
何と言ってお詫びをしたらいいのか。そもそもひったくりにあった私が悪いのに、責任は全て沖田さんが背負うなんて。
「Aさん」
「はい」
「俺は、Aさんの役に立ってますか」
見るからに落ち込んでいるであろう私を、沖田さんは一切責める様子もなくそう尋ねた。
驚きの質問に一瞬言葉が詰まったが、私の気持ちは変わらない。
「勿論です。買い出しだって沖田さんがいなかったら1人で大変でしたし、ひったくり犯も捕まりませんでした」
「良かった。それなら俺も安心しました」
胸をなで下ろす、という風に溜め息をつく。
「サポートをする、なんて言っておきながら、本当はどうしたらいいのかわからなくて。ただ、Aさんを守ることしか思いつかなかったんです。
……でも俺の"守る"は、側から見たら"迷惑"なんじゃないか、そう考えたら不安になって。けど、Aさんがそう言ってくれるっていうことは、俺の考えは間違ってなかったんだと、嬉しくなったんでさァ」
「そんなこと……」
不器用ながらも、彼なりに私を助けてくれたんだ。なんだか、心がじんわりと温かくなった気がした。
「私は、沖田さんが隣にいてくれるだけでとても支えになりますよ」
そう言えば、沖田さんも「同じですね」と返す。
右目を失っても、私には灯りが見えた。
ならば、その灯りを頼ればいいだけの話。
こんな簡単な答えを教えてくれたのは、沖田さん、あなたです。
終わり。
▼ゆうさんリクエストありがとうございました。
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特撮オタク女子 - とても面白かったです!ありがとうございます! (2019年8月15日 20時) (レス) id: f9b0269678 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - すごくおもしろかったです! 文を書くのがお上手ですね〜! このお話に出会えて良かった! (2018年3月2日 18時) (レス) id: f7a865ee48 (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 美空さん» 美空さんコメントありがとうございます!返事がかなり遅れてしまい申し訳ございません!わ、お気に入り作品に登録してくださり感謝です!ましてや作者にまで登録だなんて……!?とても嬉しいです。これからも頑張ります! (2018年1月13日 21時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
美空(プロフ) - 悪女のいろは、読ませていただきました!ほんとに面白かったです(〃▽〃)読み出したら止まらなくなっちゃって、お気に入り作品&作者に登録させてもらいました!(^o^)/ (2017年2月5日 3時) (レス) id: c3845c95d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴村 - 面白いです (2015年5月31日 17時) (レス) id: 56954dcc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2015年2月20日 18時