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「……うーん」
──何も思いつかない。
Aさんは一体何を貰ったら喜ぶんだろう?
江戸をぶらぶら歩きながら、そんな事を考える。やはり1ヶ月前と同じく、町はホワイトデーに染まっていて。
その時、前方からクルクル頭の男が近づいてくるのが見えた。その人は俺に気がつくやいなや、ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべる。
「よー、総一郎君じゃん。何やってんの?」
「総悟でさァ、旦那。……ちと、買い物をねェ」
「そうかぃ。にしてもよー、今日は何だってんだ。ホワイトデーって何?……あ、あれか。彼女からチョコを貰ったクソ男が、下心を込めて込めて込めまくったお返しをする日だろ?卑怯だよな、"優しさ"を建前にして本音はあんなことこんなことしか考えてねェんだから。ほんの少しときめいた女はすぐ落ちるからね。全く……そんな茶番だらけの日に浮かれる男女に小一時間問い詰めたいよ。何が楽しいんですか?って」
自分には関係ないけど、とマシンガンの如くスラスラと御託を並べる旦那はイタイタしくて見ていられない。おまけにセリフが長すぎる。そして回りくどい。
「まあ、お互い頑張ろうや総一郎君」
謎のキメ顔で俺の肩に手をのせた旦那。
しかし俺はそれを振り払った。
「いや、頑張るのは旦那だけですぜ。残念なことに、俺はその"浮かれる男女"に当てはまるんで」
「……お、おい嘘だろ……?」
「買い物っていうのも、お返しを買いに」
俺と旦那は立っているステージが違う。
そう言い告げると、旦那は目を見開きながら口をパクパク動かした。
「もしかして、噂の彼女さんから……!?」
噂になっているのかどうかはわからないが、彼女がいるのは確かなので頷く。
「くそっ!お前もだったのかサド一郎君!」
「総悟でさァ、旦那」
「どいつもこいつも!俺への当て付けですかコノヤロー!」
額に血管を浮かせながら、悔しそうにどこかへと走って行く後ろ姿は、まさにダメなおっさんのよう。
なるほど。これがマダオなるものか。
「……て、そんなことしてる場合じゃねェ」
思わぬ出会いのせいで時間を無駄にしてしまった。
時刻は昼の2時。まだまだ余裕はある。
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特撮オタク女子 - とても面白かったです!ありがとうございます! (2019年8月15日 20時) (レス) id: f9b0269678 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - すごくおもしろかったです! 文を書くのがお上手ですね〜! このお話に出会えて良かった! (2018年3月2日 18時) (レス) id: f7a865ee48 (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 美空さん» 美空さんコメントありがとうございます!返事がかなり遅れてしまい申し訳ございません!わ、お気に入り作品に登録してくださり感謝です!ましてや作者にまで登録だなんて……!?とても嬉しいです。これからも頑張ります! (2018年1月13日 21時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
美空(プロフ) - 悪女のいろは、読ませていただきました!ほんとに面白かったです(〃▽〃)読み出したら止まらなくなっちゃって、お気に入り作品&作者に登録させてもらいました!(^o^)/ (2017年2月5日 3時) (レス) id: c3845c95d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴村 - 面白いです (2015年5月31日 17時) (レス) id: 56954dcc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2015年2月20日 18時