ことのは

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「Aはさぁ…理想が高いんだよ」
「…そうかな」
私はただ。

かっこいい彼氏を作って、ちょっと照れながらキスして。
好きな映画とか、お互いの趣味とかそんなものをだんだん知っていって。
贅沢なレストランとかそんなものいらないけど、ちゃんと私を大切にしてくれる彼氏がほしかった。
私のことだけ、ちゃんと見つめてくれる彼氏がほしかった。

「……なんでいっつもうまくいかないんだろう…」
「…それはね？」
頭に乗った宮田の手のあったかさが気持ちよくて、体重をかけながらんー…と宮田の声を聞く。
宮田の声ってなんだかすっごく落ち着く不思議な声だな、なんて思いながら。
「Aのことを本当に好いてくれる人に出会ってないんだよ」
「…でも、今までの人もみんな好きって言ってくれたもん」
「それはAの顔とか表面だけ見て好きって言っただけでしょ？」
内面も、Aの理想も全部含めて好きって言ってくれる人、ちゃんと探しなよという宮田の声にうなづきたいけど、振られたばかりの私には素直にうなづけなくて…。
「……そんな人、いないよ」
「いるよ」
「……だって…いないもん」
「…めちゃくちゃ近くに目を向けてみるとか、どう？」
言われて思わずくっついていた宮田から離れてまじまじと宮田を見る。
「え……冗談」
「冗談じゃない」
「……冗談、でしょ？」
「だから、違うってば」
一番近くにいるでしょ？と、耳元でやさしくささやかれた瞬間、世界がぐるりと回って。





「……俺にしなよ」





もう何年も隣で笑いつづけていた宮田が。
一番彼氏とか恋愛とは遠いところにいると思っていた宮田が私を押し倒して、それでもいつもと同じ笑顔で私を見下ろした。

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