ことのは

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「なんで重いって言われるんだろう…わたし全然重くないじゃん」
「A、ペースはやいね」
大丈夫？とミネラルウォーターを差し出す宮田の手を払いのけて新しい缶を開ける。
「……私めんどくさいのかなぁ」

見た目が派手になって、軽く付き合おうよって言われることが多くなって。
いいよっていえば簡単に彼氏ができるのだけど。
遊びに行けば初めてのデートからホテル行こう、なんて言われて。
未成年でも大丈夫だよってお酒を進められて。
そのたびに断ればそれだけで重いとか純情ぶってるって振られて。
今日合コンだからデートキャンセルなって言われて怒れば、そういうめんどくさい関係は望んでないって言われて。
今回の彼氏だってそうだ。
専門学校の同級生で俺お前の事好きかも、なんて言われて舞い上がって付き合いだして。
始めはよかった。
今までの彼とは違って強引にホテルに誘ったりもしないし、ふつうに遊園地に行ったり、カラオケでデートしたりする毎日は楽しくて。
だから、今日は少しだけ覚悟していた。
今まで手をつないでキスをして…まではあったから、今日は一歩先に進むのかな、なんて。
ちょっと気合を入れておしゃれして、ご飯を食べていい感じで手をつないで歩いて。
立ち寄った夜景の見える公園。
そのベンチで、そっと顔が近づいて……。
着ていたトップスの襟元から手が忍び込んできて、思わず嫌だと払いのけたらそういうお堅いかんじめんどいんだよなぁ…と頭を掻いた彼は立ち上がって。
『お前顔はかわいいしって我慢してたけど、まじ重いしめんどいのな』
『……そ…んな』
『俺3か月記念とかホントどーでもいいんだけど』
ってか正直手軽に遊べる奴らのほうがいいわ、と言ってそのまま私に背を向けて。
『めんどくさいし、俺ら別れよ』
『は……？』
『はい、じゃーね』
ひらひらと手を振って帰って行った「元」彼氏を唖然と見つめるしかなかった。

「……なんで…」
「………俺はめんどいとか思ったことないけどね」
めんどかったらこうやって家まで来てないし、と笑った宮田の肩に思い切り頭突きして、宮田のくせに包容力があるなんてずるいって笑った。

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