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「……さん、藤ヶ谷さん」

ゆさゆさと肩をゆすられてタオルが落ちる。
「あ……」
「ふふ、少しは眠れました?」
「ごめん、かなり寝てたみたい」
河嶋さんがもう横尾さんのメイク終わってしまったので藤ヶ谷さんもいいですか、というのでよろしくお願いしますと椅子に座りなおす。
「今日はちょっと大人な男って感じの撮影だそうなので、アイラインとか濃いめに入れますね」
「はい」
「ファンデ塗るのでちょっとだけ目をつぶってください」
その声に素直に目を閉じる。
二日酔いの酒を少しでも抜くためにすこし寝させてもらっているうちに、いろんなことを思い出してしまったようだ。
「……あの彼女のことですよね、さっきおっしゃっていたの」
「…うん、そう」
俺河嶋さんの前で泣いてばっかだよね、と笑えば、お話聞くくらいしかできないですけど、と返された。
「いや、ほんといつもお世話になってます」
「いえいえそんな」
鏡越しに目を合わせて2人で笑った。


彼女のことが好きだから、彼女に俺か渉か選んでほしいからと別れを告げた次の日。
コンサートの練習のあとの雑誌撮影でひどい顔でここに座った俺のただならぬ様子を察した河嶋さんに大丈夫ですか?と聞かれた俺は泣くつもりなんてなかったのに知らないうちに涙がこぼれて。
正直、自分でも驚いた。
デビューのころから何度もお願いしていたメイクさんだけど、たまにはスタッフのみなさんと打ち上げに行くこともあるけれど、彼女はほかのスタッフさんに比べれば話しやすいなってくらいの印象しかなかったから。
『……顔のむくみだけでもとっちゃいましょう』
あえて何も聞かずに蒸しタオルで俺の涙を隠してくれて、ほかのメンバーには顔のむくみを取っているだけだといって順番を最後に回してくれた。
『すみません……』
『全然いいですよ』
皆さんお忙しいから結構寝不足とかになっちゃいますしね、と河嶋さんはさっき俺が泣いたことはなかったことにしてくれるちょっとしたやさしさに勝手に口が動いた。
『……彼女と別れちゃったんですよね、昨日』
横尾渉と三角関係で…とは言えないからそのあたりはごまかしたけど、結局メイクしてもらいながら全部ぶちまけてしまった。
それをやな顔一つせずに聞いてくれた河嶋さんにさすがに…と謝ればいいんですよと笑ってくれて。

『私も…かなわない恋してるのでわかります』

その日から河嶋さんは、俺が落ち込んでいるときに弱音を吐ける人になった。

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設定タグ:キスマイ , 藤ヶ谷太輔 , 近くて遠い、僕ら   
作品ジャンル:タレント
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めろんぱん(プロフ) - minaさん» はじめまして(^-^*)コメントありがとうございます!そして曲まで聴いて下さったんですね!このお話を書くのにどうしても使いたかった曲なので、実物を聞いていただけてうれしいです。これからも不定期更新ですが頑張りますのでまたぜひ遊びに来て下さいね! (2015年9月2日 2時) (レス) id: 694980591a (このIDを非表示/違反報告)
mina(プロフ) - 初めまして。この作品の更新を楽しみにしてます!minaです。突然のコメント失礼します(_ _) めろんぱんさんが紹介してた曲、聴きました。すごくいい曲でこの前までの自分の気持ちと同じ歌詞で泣きました。 (2015年9月1日 16時) (レス) id: 8608d5ef27 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年8月6日 2時

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