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「ガヤさん、次だよ」
「おー」
声をかけてくれた千賀にお礼をいって、マグカップ片手にメイクルームに向かった。
「河嶋さん、おつかれ」
さっきはありがとうと扉を開けてそう言えば、河嶋さんはいえ…と言いながら。
なんで。
なんで俺の目を見ないんだろう。
「…さっきさ、なんかあった?」
「…いえ、なんでもないですよ」
このあいだはすみませんでした、と鏡越しにぺこりと頭を下げられた。
「ううん、ちゃんと帰れた?」
送ってあげられなくてこちらこそごめんと言えば、大丈夫でしたとようやく少しだけ笑ってくれて。
「まずこれ、あげるね」
「あ、ありがとうございます」
「今度は違うマグカップ狙いにまた行ってみる?」
どう?と鏡越しに河嶋さんを見た、けれど。
「いえ……ちょっと忙しくなりそうなので」
やっぱり目が、合わなくて。
「じゃあさ、今日の帰りとか」
「……今日は予定があって」
「…じゃあ、いつならいける?」
なおも食い下がる俺とは目を合わせてくれない河嶋さんは、メイク道具を取るために背中を向けて、そして。
「……もう、2人で会うのはやめにしてもいいですか」
「え………なん」
「ちょっとアイライン入れるので目をつぶってください」
「…河嶋さんっ」
メイクが崩れるとか、そんなことどうでもよくて。
あんなに2人でこのあいだは笑いあえたのに。
隣にいることが当たり前になれそうだなんて、思えたのに。
それなのに。
「藤ヶ谷さん、今日元カノさんにお会いしても元気そうで安心しました」
「いや、だってもう関係ないって」
「…私の役目は終わったなって、思いました」
ご飯に連れて行っていただいたり、ライブに行ったり、楽しかったですよと笑う河嶋さんはやっぱりこっちをかたくなに見てくれなくて。
「河嶋さん!」
「……メイクは以上です」
次は北山さんを読んでいただけますか、と機械的に告げる河嶋さんに想いを伝えようとあせるのに。
「俺……河嶋さんのこと」
「藤ヶ谷さんは、アイドルですから」
素敵な夢をありがとうございました、と頭を下げた河嶋さんは。
「な……で、笑って」
近づいた、と思っていた2人の距離を。
新しい恋への気持ちを。
粉々に砕く河嶋さんのはかない笑顔に何も言えないまま、楽屋に戻った。
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めろんぱん(プロフ) - minaさん» はじめまして(^-^*)コメントありがとうございます!そして曲まで聴いて下さったんですね!このお話を書くのにどうしても使いたかった曲なので、実物を聞いていただけてうれしいです。これからも不定期更新ですが頑張りますのでまたぜひ遊びに来て下さいね! (2015年9月2日 2時) (レス) id: 694980591a (このIDを非表示/違反報告)
mina(プロフ) - 初めまして。この作品の更新を楽しみにしてます!minaです。突然のコメント失礼します(_ _) めろんぱんさんが紹介してた曲、聴きました。すごくいい曲でこの前までの自分の気持ちと同じ歌詞で泣きました。 (2015年9月1日 16時) (レス) id: 8608d5ef27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年8月6日 2時