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「……あれ、おかしいな」
「…藤ヶ谷さん、目つぶってください」
蒸しタオル載せておけば目も落ち着くし、横尾さんにばれませんからという河嶋さんに甘えて椅子を少し倒す。
私でよければ話聞きますね、という河嶋さんの声に前にもこんなことあったな…なんて思いながら目を閉じた。
思えば、最初から河嶋さんには全部ばれてたな…なんて。
彼女が好きだったことも、彼女を失ったことも。
いつもメイクで俺らの顔を見ているからか、全部お見通しだった。
彼女を好きになった日のことを今でも覚えている。
さいしょに彼女と出会った日のことだって。
デビュー前、ある日の練習。
その時俺らはグループを結成してまだあまりたっていないころで、先輩のバックで今日は3分くらい踊らせてもらえる、そんな日の朝。
あのころのあいつは本当にやなやつで。
しゃべれないくせに人の上げ足はとるし、踊れないくせに人の悪いところを説教するし。
同じグループだけど一生仲良くなれそうもないな。
そんな風に思っていたのは俺だけじゃなかったはずで。
だから初めは好奇の目で彼女を見ていたものだ。
一番とげとげしていたあいつ……横尾渉が連れてきた子だったから。
最初にであったころのことを覚えている。
あいつの服の裾をつかむ小さな手。
半分隠れて俺らのほうを見る彼女。
『渉くん』と呼ぶ高くて小さい声。
そして、あいつの見たこともないような笑顔。
座ってなよ、といわれたパイプいすに申し訳なさそうに座っていた彼女のところに、あいつの目を盗んで最初に話しかけに行ったのは千賀と宮田で。
学校が休みのタイミングで何度も練習終わりなんかに顔を出すようになった彼女に恐る恐る近づいて行った玉はあのころは泣き虫で。
彼女が笑って玉の手に小さな飴をおいて、玉も笑顔になって。
いつからか、彼女の周りにはいつも誰かメンバーがいるようになった。
時には冗談を言い合って。
時には厳しいレッスンに泣いて、慰めてもらって。
笑って、泣いて、怒って、全部。
そんな中、俺は彼女とあいさつ程度の会話しかできないままデビューが決まって。
人見知りだから、仲良くできないんだとずっと納得させようとし続けてきたけれど。
素直になれなかったのは彼女のことが気になっていたからだと気が付いたのは、デビューして2年がたったラジオ収録の日だった。
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めろんぱん(プロフ) - minaさん» はじめまして(^-^*)コメントありがとうございます!そして曲まで聴いて下さったんですね!このお話を書くのにどうしても使いたかった曲なので、実物を聞いていただけてうれしいです。これからも不定期更新ですが頑張りますのでまたぜひ遊びに来て下さいね! (2015年9月2日 2時) (レス) id: 694980591a (このIDを非表示/違反報告)
mina(プロフ) - 初めまして。この作品の更新を楽しみにしてます!minaです。突然のコメント失礼します(_ _) めろんぱんさんが紹介してた曲、聴きました。すごくいい曲でこの前までの自分の気持ちと同じ歌詞で泣きました。 (2015年9月1日 16時) (レス) id: 8608d5ef27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年8月6日 2時