動き出したもの―side you― １ ページ10
「河嶋、ちょっと」
放課後いつものように宮っちと玉ちゃんと誰も来ない図書室でのんびりと過ごしていると、珍しく図書委員担当の香取先生が図書室まで私のことを呼びに来た。
香取先生はおよそ図書委員の先生らしくない、どちらかと言えば明るくて体育会系っぽい先生だけれど案外ちゃんとした、お兄ちゃんのような頼りになる先生だ。
「珍しいですね、先生がこちらまでいらっしゃるなんて」
「ちょっと頼まれてほしいんだけど」
「……なんです？」
「あー…あれ、あの図書室の雑誌のさ、もういらないやつとかぼろぼろの修復できない本とか処分してもらおうと思って」
ぶっちゃけ古い本でほしいやつがあったら何冊か持っていってかまわないから、と言われて俄然やる気になる。
「先生なんだって？」
「いらない雑誌とか古くなって修復もできなさそうな本を処分したいんだって」
私たちで勝手に選んでいいみたい、と言えば同じく本好きな宮っちがじゃあ…と立ち上がった。
「俺は明日の予習してる」
昼休みを数学に費やした玉ちゃんは、明日のライティングの予習が大変そうだ。
「先生がね、何冊か古い本持って行ってもいいって」
「マジで？じゃあ俺ちょっと選んでくる！」
古くなった本だけだよ、と声をかけたけれど、宮っちに伝わったかどうか…と苦笑しながら、まずは古い雑誌の整理をする。
大抵図書室には雑誌は一種類しか入ってこない。
けれどもたまに職員室と図書室だとか、国語科と図書室だとかに同じ雑誌が送られてくることがあって、それを定期的に処分するのも私たちの仕事だ。
やっぱりＷ杯があるとスポーツ関係の表紙が多いな、なんて思いながらせっせといらない雑誌を積み上げればあっという間に20冊近くになってしまう。
「俺があとはやるからAも本選んできなよ」
宮っちがそう言ってくれて、大好きな本棚へと足を伸ばす。
古い本には新装版にはない重厚さがあって、私は好きだ。
ほんの背表紙をそっと指でなぞって、そのごつごつした感触を楽しんで。
何の本を持って帰ろうか。
『虞美人草』…『花ざかりの森』…それとも…？
しばらく悩んだ私は、もう文庫版ばかりが借りられてしまい、ずいぶん長い間誰にも触られなかったであろう一冊の古い本を取り出す。
『歯車』
もう何度も読んでいるこの本をなぜ選んだのかわからないまま、それでもこの本を抱えて、いくつか処分しなければいけない本を選び始めた。
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めろんぱん(プロフ) - 由貴さん» コメントありがとうございます！お話はもう少し続きますが、気長におつきあいください(^-^*) (2015年3月15日 2時) (
レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - 面白いです(///ω///)♪ (2015年3月15日 0時) (レス) id: 08fed4a8fe (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - ふうたさん» コメントありがとうございます！気分屋なので不定期更新になってしまってすみません(_ _)宮っちは密かにがっつり書いてみたかったのでお兄ちゃん兼友人として満喫中です(^-^*)これからもよろしくお願いします！ (2015年2月25日 5時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
ふうた(プロフ) - 前作から読ませていただきました！今回のお話も大好きです。夜に更新されてるかな？て時が1日の癒しの時間です。みやっちみたいな男友達が居たらいいなと思いながら楽しみにしています！ (2015年2月24日 23時) (レス) id: b28de98085 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - めーるさん» コメントありがとうございます！一癖もふた癖もある人ばかりなので一筋縄ではいかないお話になりそうですが、楽しんでいただけたらうれしいです(^-^*) (2015年2月4日 23時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めろんぱん | 作成日時：2015年1月22日 0時
