Hate You!〈F.Taisuke〉

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「たーいすけ、今日うちで飯食ってく？」
お中元で焼肉セットがきたから、という渉の言葉に勢い良く頷けば、太輔小食なくせに肉好きだよね、と笑われた。
「しょーがないじゃん、好きなもんは好きだし」
「はいはい、今日は2人で焼肉パーティーしよ」
軽い鞄を肩にかけて、汗でべたつく制服のシャツをぱたぱた引っ張りながら教室を出る。
ふと廊下の向こうの方に目をやればよく知る顔が2つ並んでいた。
「Aー！今日アイス食いに行こうぜ？」
「アイス？おごってくれる？」
「おう！んでそのあと…」
くすくすと笑い合って遠ざかっていく背中。
「渉…俺」
言いかけた言葉は渉が優しく俺の肩に置いた手で止まった。
「家でゆっくり聞くから」
俺も気になってた、という言葉に肩の力がいい感じに抜けた気がした。






「で？」
渉の家。
リビングのダイニングテーブルにホットプレートを置いて2人で向かい合って肉を焼く。
流石渉なだけあってサラダやキムチなんかが所狭しと並べられている。
「ん？」
「ん？じゃなくて。Aのこと」
「あー…ってかまずなんで渉ってAちゃんのこと呼び捨てなわけ？」
「いや、変な感情はないよ」
なんていうか、女友達になった気分でなんていう渉は、それでもAちゃんのことが気に入ってるみたいだ。
「太輔だって呼び捨てしちゃえばいいじゃん」
「渉みたいに人懐っこくないんですー」
人見知りの俺は、本当に好きな子にはめったに話しかけられない…たとえ勇気を出したってどこかからまわっているような気がする。
「だからって焦っちゃダメ」
「焦ってるっていうか…なんかさ、北山とAちゃんをみてると…もやもや？どろどろ？するっていうか」
これって焦ってるってこと？と渉に聞けば真ん丸な目をした渉がこちらを見ていて。
「え…まじ？太輔」
「まじ？って何がだよ」
そう聞き返せばうーん…と少し悩んだ後大きく息を吐いた渉が俺の皿に焼けた肉を取り分けて。


「…それはね、独占欲だよ」


「独占欲……？」
「そう、やきもちってやつ」
太輔本当にAのこと好きなんだね、なんて今更なことを言う。
「当たり前じゃん」
「じゃあ」
じっ…とこちらを見た渉は真面目な顔でこちらを見ていた。
「なんだよ？」
「じゃあ、焦っちゃダメだよ太輔」
苦しいのも片想いの醍醐味だよ、と意地悪く笑う親友を見つめた。

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