Hate You!〈F.Taisuke〉

嵐の前触れ？―side you―　１ ページ31

「A、期末テスト勉強はかどってる？」
「全然、化学が全然わかってない気がする…」
「Aの場合は物理もでしょ？」
「そういう玉ちゃんは微分の克服できてないじゃん！」
いつもの朝の私たち。
梅雨だけあって最近は毎日のように雨が降って、じめじめした毎日が続いている。
藤ヶ谷太輔――藤ヶ谷君と友達になって、最初は戸惑っていた玉ちゃんと宮っちも思うところはあるんだろうけど何にも言わずに一緒にいてくれる。
藤ヶ谷君と友達になった…といってもお昼を一緒に食べるくらいの友達だけど、友達になってからも何も私たちの関係が変わることはなかった。
この朝の時間も、放課後の図書室も変わらないままだ。
でも、近くで見てみると藤ヶ谷君のこともすこしずつだけどわかってきた。

意外に人見知りでシャイなこと。
友達の横尾君と話してると俺の渉！っていっつも横尾君にくっついて邪魔してくること。
女の子にすごく人気があること。
でもバスケが一番大事なこと。

今まで突っぱねてキライだと言い続けてきたけれど、案外いいところもあるんだと知って。
あの時の気の迷いのような言葉も悪くなかったかななんて思う。


「A数学教えて」
「じゃあ代わりに物理教えて？」
「玉ちゃん先生にまかせなさい！」
朝の図書室に明るい笑い声が響いた。









カチカチと時計の音が響く。
カリカリとシャーペンを滑らせる音。
テストの緊張感は嫌いだ。
期末テストは全部で5日間。
毎日3科目ずつテストを受けるなんて、もう頭脳っていうよりも体力勝負みたいだ。
しかも今受けているのは一番苦手な物理で、散々玉ちゃんに教わった公式が頭の中をくるくる回っているけどどれをどう使っていいのか…。

『物理は部分点ももらえるからできるところまで計算してみて』

玉ちゃんに言われた言葉を思い出して必死に埋められるところだけでもと答えを書き込んでいった。









「おわった……」
机にペタッと突っ伏して解放感を味わっていると、よく知る手が私の頭を優しくなでる。
「宮っち」
「Aできは？」
「んー…物理がやばいかも」
「おれは社会」
日本史覚えること多すぎ、と言いながら宮っちが鞄を手に取る。
「今日は恒例の焼肉、でしょ？」
「テスト後のごほうびだもんね」
並んで歩きながら3人恒例のテストお疲れ様会でもある焼肉食べ放題の話をする。
「玉校門にいるってさ」

靴をかえて外に出てみれば、いつの間にか梅雨はあけてもうすっかり夏の空だった。

２→←覚めないで―side T―

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す