覚めないで―side T― ページ30
面白くない。
ぜんっぜん面白くない!
ここ最近昼休みになると繰り広げられる光景にため息しか出ない。
「今日はコロッケ作ってみたんだけど」
「わ!これ肉じゃがコロッケでしょ?」
「そうそう、昨日兄ちゃんがどうしても肉じゃがが食べたいって言いだしたからちょっと多めに作ってみたんだよね」
「肉じゃがコロッケってお肉が大きくておいしいよね」
「Aの分も作ってあるよ」
「ありがとう!私は今日は煮込みハンバーグだよ」
何あの会話。
っていうか友達になって早々いきなりAを呼び捨てにするなんて!
あの横尾渉…実は藤ヶ谷太輔よりもやっかいなんじゃないの?
せっかくのAお手製のお弁当なのに…なんだかいまいち味がしないような気がした。
Aがあの藤ヶ谷太輔と友達になったと聞いたときには驚いた。
俺と宮田とAのたった3人の小さな世界。
その世界への侵入者なんて最悪だ。
「Aちゃん」
ほら、藤ヶ谷太輔はいつもAを甘い甘い声で呼ぶ。
男の俺だってかっこいいなぁって思うんだから、Aだって時間の問題かもしれない。
「Aちゃん、ねぇ」
「何?藤ヶ谷君」
今横尾君と話してるんだけど?と不機嫌を隠さない顔で言う。
そのAの顔を見て、ああAはまだ全然藤ヶ谷太輔に興味がないんだって安心した俺がいて、心の狭さに我ながら嫌気がさす。
「…玉、大丈夫?」
「宮田…」
心配そうに俺の顔を覗き込む宮田に大丈夫、と答えてみるけど、宮田もちょっと不安そう。
「Aは男の趣味だけは良いから大丈夫だよ」
俺らが友達なんだから、と笑う宮田に俺もようやく笑顔になる。
「Aちゃんってなんで玉森の分まで弁当作ってるの?」
向こうの方で藤ヶ谷太輔の質問に答えるAの声に耳を傾ける。
Aは俺の両親が共働きだからってついでにお弁当を作って持ってきてくれる。
中学校のころからの俺の一番の楽しみだった。
「玉ちゃんは友達だからよ」
「じゃあ俺の分も作ってよ」
俺も両親共働きだよ?とAの顔を覗き込む彼に、なんだか俺の居場所を取られていくような気がして心が冷えていく。
でも。
「お弁当は玉ちゃんだけ特別なの」
「なんで?ずりぃじゃん」
「玉ちゃんは親友だから」
えーそんなぁー…と凹む藤ヶ谷太輔を横目に俺は笑顔になる。
この気持ちを伝える気なんてないけど。
こうやって、俺たちの世界は広がっていくのかもしれないけど。
もう少しこのまま、Aの心を覚まさないで。
嵐の前触れ?―side you― 1→←広がる波紋―side M―
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めろんぱん(プロフ) - 由貴さん» コメントありがとうございます!お話はもう少し続きますが、気長におつきあいください(^-^*) (2015年3月15日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - 面白いです(///ω///)♪ (2015年3月15日 0時) (レス) id: 08fed4a8fe (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - ふうたさん» コメントありがとうございます!気分屋なので不定期更新になってしまってすみません(_ _)宮っちは密かにがっつり書いてみたかったのでお兄ちゃん兼友人として満喫中です(^-^*)これからもよろしくお願いします! (2015年2月25日 5時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
ふうた(プロフ) - 前作から読ませていただきました!今回のお話も大好きです。夜に更新されてるかな?て時が1日の癒しの時間です。みやっちみたいな男友達が居たらいいなと思いながら楽しみにしています! (2015年2月24日 23時) (レス) id: b28de98085 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - めーるさん» コメントありがとうございます!一癖もふた癖もある人ばかりなので一筋縄ではいかないお話になりそうですが、楽しんでいただけたらうれしいです(^-^*) (2015年2月4日 23時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年1月22日 0時